1997 Fiscal Year Annual Research Report
下水処理系で生成・放出される化学物質代謝産物の生態毒性
Project/Area Number |
08680572
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤田 正憲 大阪大学, 工学部, 教授 (70029289)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池 道彦 大阪大学, 工学部, 講師 (40222856)
岩堀 恵祐 静岡県立大学, 大学院・生活健康科学研究科, 助教授 (40183199)
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Keywords | アルキルフェノールエトキシレイト / 下水処理場 / 生分解産物 / アルキルフェノール / ハロゲン化 / 急性毒性 / 変異原性 |
Research Abstract |
下水処理場に大量に流入している化学物質のモデルとしてアルキルフェノールエトキシレイト(特にノニルフェノールエトキシレイト:NPE)を選び、日本全国の下水処理場からの生分解産物の放出を調査したところ、エトキシ鎖長が短いNPE(NPEO)とその末端がカルボキシル化された物質(NPEC)、あるいはそのハロゲン化物が検出された。ある処理場内に設置した活性汚泥法のモデルプラントでNPEの物質収支を調べ、流入したNPEの多くは生物処理で除去されるものの、一部は難分解性のNPEOやNPECとなって処理水中に含まれて放出され、また一部はより分解の進んだノニルフェノール(NP)となって余剰汚泥に含まれて排出されることが示された。検出された代謝産物について、ミジンコを用いた急性毒性試験、umuテストによる変異原性試験を行ったところ、いずれにも明確な変異原性は認められなかったものの、生分解産物のハロゲン化物にはかなりの急性毒性が認められた。一方、実験的検討は行わなかったが、NPにはこれまでの毒性の概念にはなかった内分泌系撹乱(ホルモン擾乱)性のあることが報告されており、その放出に伴う生態影響が懸念される。以上より、一例ではあるものの、大量に生産・消費されている化学物質の一部が、下水処理場においてより生態影響の大きい分解産物や修飾物に転換されて、環境中に放出されている可能性が明らかにされたものといえる。
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