1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08680577
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松浦 正明 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 助教授 (40173794)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 式彦 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 教授 (40022834)
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Keywords | 放射線 / 低線量 / 原爆被爆者 / 疫学 / リスク解析 / ガン / 死亡率 |
Research Abstract |
低線量放射線被曝による人体への影響に関する疫学研究では、放射線影響研究所ならびに長崎大学がそれぞれ独自に被爆者集団を追跡し、線量別死亡率曲線などを基に種々の議論がなされているが統一的な見解に達していない。本研究では広島大学原爆放射能医学研究所が追跡している広島県内移住被爆者データに対し、当研究所で最近考察された線量推定方式ABS93Dを用いて低線量被爆者等に線量を付与する作業を行い、被爆者の種々の癌死亡率におけるリスク解析を行った。 ABS93Dの線量が付与された約5万人弱の広島原爆被爆者を対象とし、1968年から1987年の20年間における白血病・胃・肺・結腸・乳・子宮癌などの死亡率に関して調査した。臓器線量0.5cGy未満を0Gy対照群とした場合の、0.01-0.05cGy群、0.06-0.09cGy群、0.1-0.19cGy群、0.2-0.49cGy群、0.5-0.99cGy群等の各低線量群における相対リスクを比較すると、一部の特定の群に置いては対照群と比較して小さな相対リスクが観察されたが、いずれも5%水準で統計的な有意さは認められなかった。観察期間をさらに5年間延長した調査結果においてもほぼ同様な結果が観察された。人における放射線ホルミシスを検証する場合、使用した統計モデルや対照群の選定など統計的な取り扱いに注意しなければ間違った結果を導出する恐れがある。本研究では、統計数理研究所等の研究者とも統計的・疫学的方法についても議論を重ねてきた。今後さらにそこで得た知見や本課題で整備されたデータを基に研究を行い報告していく予定である。 以上の結果の一部については、第37回原子爆弾後障害研究会において発表がなされ、長崎医学界雑誌に掲載された。また関連する結果の一部はInternational Journal of Radiation Biology誌に掲載される予定である。
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[Publications] M,Matsuura: "Analysis of cancer mortality among Atomic Bomb Survivors registered at Hiroshima University" International Journal of Radiation Biology. (1997)
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[Publications] 下方浩史: "原爆被爆者がん検診の意義に関する研究 第1報 - 腫瘍登録データとのレコードリンケージについて -" 長崎医学会雑誌. 71. 253-256 (1996)
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[Publications] 末永昌美: "ABS93Dによる広島県在住原爆被爆者の悪性新生物のリスク評価" 長崎医学会雑誌. 71. 313-318 (1996)
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[Publications] 磯辺 威: "原爆被爆者がん検診の意義に関する検討" 長崎医学会雑誌. 71. 250-252 (1996)