1996 Fiscal Year Annual Research Report
三種混合ストップトフローを用いる分子シャペロンの機能発現機構の速度論的解析
Project/Area Number |
08680655
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
河田 康志 鳥取大学, 工学部, 助教授 (40177697)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝端 知宏 鳥取大学, 工学部, 助手 (50263489)
|
Keywords | 分子シャペロン / シャペロニン / 基質認識 / 速度論 / ストップフロー |
Research Abstract |
タンパク質の立体構造形成反応を助け,生体内で重要な働きをしている分子シャペロンの機能発現機構をHPLCとストップトフロー装置を用いて詳細に研究した。 大腸菌由来の分子シャペロンであるGroELは様々な蛋白質の再生中間体を認識して結合するが,結合認識にどのような性質の要因が働いているのかはまだ明確にされていなかった。我々は,ウマチトクロームcの長さの異なる様々なペプチドを用いてGroELとの相互作用をそれらのCD測定によるコンフォメーションと比較しながら調べた。静的な結合は蛍光色素でペプチドをラベルし,GroELとの結合をHPLCゲル濾過クロマトグラフィーで調べ,非常に結合力が強い基質に対しては速度論的な実験をストップトフロー装置を用いて行った。実験の結果,GroELは構造形成したネイティブなチトクロームcとは全く相互作用しなかったが,構造は壊れているが,コンパクトな構造を持ったアポチトクロームc,さらに比較的長さの長い変性したペプチドとは強い結合を示した。ペプチドの長さが短くなり,疎水性の小さいペプチドはGroELとは相互作用しなかった。一方,GroELと強く結合するペプチドの結合力は,溶媒中の塩化カリウム濃度を高めると弱まることが分かった。これは,GroELが酸性タンパク質であり,チトクロームcが塩基性タンパク質であることから説明することができた。我々はこれらの実験結果から,GroELの基質との結合様式には,疎水性相互作用とイオン的相互作用の二種類が存在していることを示し,中でも特に前者が重要な要因を占めるものと結論した。さらに,GroELの基質結合の速度定数から,再生中間体の認識が有効に起こるかどうかは,その中間体自身の構造形成そのものの反応速度との兼ね合い(競争)であることも明らかにした。これらの結果はシャペロニンの機能発現機構を理解する上で非常に基礎となり,重要であると思われる。
|
-
[Publications] Hoshino,et al.: "Interaction of GroEL with Conformational State of Horse Cytochrome c" J.Mol.Biol.262. 575-587 (1996)
-
[Publications] 溝端知宏,河田康志: "分子シャペロンGroEの作用機構" 日本農芸化学会誌. 70. 576-579 (1996)