1996 Fiscal Year Annual Research Report
アスパラギン結合型糖鎖遊離酵素の構造と特異性の分子進化
Project/Area Number |
08680662
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
伊藤 和央 大阪市立大学, 理学部, 講師 (20183171)
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Keywords | エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼHS / アスパラギン結合型糖鎖 / 糖タンパク / 上皮細胞 / ヒト口腔内上皮細胞 / ヒト唾液 / 糖鎖生物学 |
Research Abstract |
エンドHSはヒト口腔内上皮細胞の膜結合型酵素であるためその存在量は少ないことが予想された。このため材料であるヒト上皮細胞の入手法および高収率で精製することが要求された。。まず酵素給源について、ヒトケラチノサイト培養細胞系を用いて検討した。その結果、細胞は容易に増殖し、比較的大量に得ることができた。しかしエンドHS活性は全く検出されなかった。。またCa^<2+>添加による分化誘導を試みた。しかし細胞は口腔内上皮細胞と形態的に類似した状態に分化したがエンドHSの活性誘導は起こらなかった。これらの結果から、同じヒト上皮細胞でも、口腔内上皮のように分化の最終段階でエンドHSは活性発現し、増殖能を有する状態では発現していないこと、しかもCa^<2+>での分化誘導でもエンドHSは発現誘導されないことが判明し、エンドHSの発現は上皮細胞の分化と関連していることが考えられた。したがってエンドHSの給源はヒト口腔内上皮細胞とした。唾液中に剥離してるう口腔内上皮細胞の遠心分離で集め、洗浄後、これを酵素給源とした。エンドHSをCHAPSで可溶化後、種々カラムクロマトグラフィーで精製した。特に、新たに開発したキチンカラムクロマトグラフィーでは比活性が約100倍上昇し、しかも100%に近い収率で酵素を回収できることができ、エンドHSの精製のための有効な手段を得ることができた。エンドHS活性はMo no-Qカラムクロマトグラフィーで3つの活性画分に分かれ、溶出される順にエンドHS-1、2、3とした。エンドHS-1と2の各精製酵素標品は電気泳動的に単一で、それぞれ約18μg、65μgのタンパクとして得られた。エンドHS-3標品は電気泳動的には2、3のタンパクの混在が認められエンドHSは約30μgのタンパクとして得られた。これら精製エンドHSを用いて部分アミノ酸配列決定、オリゴヌクレオチドの合成、ポリメラーゼ連鎖反応を行っていく予定である。
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[Publications] 伊藤和央: "エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼHSによるアスパラギン結合型糖鎖の異化経路の検証-標的糖タンパクの存在-" 生化学. 68. 728 (1996)
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[Publications] 伊藤和央: "エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼHSによる糖鎖不全ヒト唾液アミラーゼ分子種の生成とヒト唾液アミラーぜファミリーCの存在" 日本農芸化学会誌. 71. 131 (1997)
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[Publications] 伊藤和央: "エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼHSの標的糖タンパクの存在の検証" 日本農芸化学会誌. 71. 131 (1997)
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[Publications] 伊藤和央: "エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼHSによる糖鎖不全ヒト唾液アミラーゼ分子種多様化" 応用糖質科学. 2. (1997)