Research Abstract |
(研究の目的)ガングリオシドは酸性糖質を含む糖鎖と炭化水素鎖をもつ複合糖脂質であり、原形質膜の外表面に存在し、糖蛋白質と共に細胞表面の「顔」としての様々な働きを担っている。ガングリオシド分子は細胞の分化・発生・成長の制御、免疫機能の発現等に関与していることが知られているが、現在のガングリオシド研究最大の課題は、細胞間認識に直接関与したり、細胞と基質の接着を間接に調節する機能、種々のレベルでの細胞膜情報伝達調節機能の解明である。本研究の目標は、ガングリオシド分子の生体膜における役割、ガングリオシド分子と特異的に反応する或種の抗体物質との相互作用、糖鎖を介した分子認識機構を、構造生物学の研究にとって極めて強力な手法である中性子散乱、放射光X線散乱を中心に、熱測定、NMR、光散乱等の物理化学的手法を相補的に利用して、生物物理学的観点から総合的に解明することにある。 (現在までに実施された研究の経過と結果)本課題代表者及び研究分担社は、ガングリオシドの溶液中での構造安定性と機能に関して、中性子散乱、放射光X線散乱、示差熱測定、NMR等の物理化学的実験手法と分子動力学的解析手法を用いて研究を推進し、その結果、ガングリオシドの水分散系での構造安定性に関して、通常の生体脂質とは著しく異なった性質を明らかにし、ガングリオシド親水性頭部及び疎水性脂肪酸側鎖の構造の基本構造に関して、詳細な情報を得た。すなわち、ガングリオシドが溶液中でミセル構造を取り、pH、温度、イオン強度の変化によりその形を変化させること、分子種による溶液構造の違い、糖鎖広がりと水和との関連等について知見を得て、一部は既に公表した(文献:1-4)。また、蛋白質との相互作用に関しても、蛋白質表面の糖鎖化学修飾の違いにより、複合体の構造及びその形成過程が著しく異なることを見いだし、結果の一部も公表した(文献:5)。 現在までの研究経過を踏まえ、次年度(平成9年度)も十分な成果を得られるものと考える。 (公表論文) 1)M.Hirai,et al.,Biophys.J.,1996,70,1761-1768.2)M.Hirai,et al.,J.Phys.Chem.,1996,100,11675-11680.3)M.Hirai,et al.,J.Chem.Soc.,Faraday Trans.,1996,92,4533-4540.4)M.Hirai,et al.,Thermochim.Acta,1997,in press.5)M.Hirai,et al.,Prog.Colloid Polym.Sci.,1997,in press (国際会議及び学会発表) M.Hirai,et al. 2件:International Symposium on Colloids and Poymer Science,October 10-13,Nagoya,Japan. 2件:14th International Conference on Chemical Thermodynamics,August 25-30,1996,Osaka,Japan. 2件:日本生物物理学会(1996.11.つくば市),日本物理学会(1997.3.29.名古屋市,発表予定)
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