1996 Fiscal Year Annual Research Report
ナメクジ単離脳における嗅覚学習の画像解析-味覚入力による嗅覚処理の修飾機構-
Project/Area Number |
08680714
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川原 茂敬 東京大学, 薬学部, 助手 (10204752)
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Keywords | ナメクジ / 嗅覚 / 味覚 / 学習 / 同期活動 / 膜電位感受性色素 / 光学測定 |
Research Abstract |
ナメクジ(Limax marginatus)の嗅覚-味覚連合学習の神経回路メカニズムを明らかにする研究の一環として、脳とともに唇を摘出したin vitro標本を用いて、味覚入力が嗅覚中枢の神経活動に及ぼす影響を調べた。嗅覚中枢である前脳は10^4〜10^5個の介在神経から構成され、それらの膜電位が同期的に振動している。この同期活動はウサギの嗅球、バッタの触角葉・キノコ体にも存在し、嗅覚中枢一般の性質であると考えられている。 まずは、脂溶性蛍光色素(DiI)を用いて味覚神経束の投射を形態学的に調べた。味覚神経束は主に中脳および後脳に投射していて、前脳に対する直接の投射は認められなかった。次に、学習の際に無条件刺激として用いるキニジン(苦味物質)の効果を電気生理学的に調べた。細胞外記録電極で前脳の同期活動を記録しながらキニジン溶液を唇に投与すると、同期活動の振動数が変化した。振動数は増加する場合(30%)と減少する場合(60%)とが観察され、減少する例がほとんど見られない匂い刺激の場合とは対照的であった。そこで、振動数が減少するときに前脳の神経活動の時空間パターンがどのように修飾されているか調べるために、膜電位感受性蛍光色素(Di-4-ANEPPS)を用いて光学測定を行った。キニジン溶液を唇に灌流投与すると、味覚神経束の直接投射を受けている後脳で興奮がみられ、ほぼ同時に前脳の細胞体層が過分極し、振動数も減少した。匂い刺激の場合とは異なり神経突起領域の膜電位変化は顕著ではなかった。以上の結果より、味覚入力は前脳に対する直接の投射を持たないにもかかわらず前脳の神経活動を修飾し、しかも嗅覚入力とは異なって前脳の細胞体層を主に修飾することがわかった。また、前脳は嗅覚刺激のみならず味覚刺激に対しても応答することから、嗅覚-味覚連合野としての性質を確かに持つことが示された。
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[Publications] 川原茂敬: "膜電位感受性蛍光色素を用いたナメクジ中枢神経系の解析" バイオイメージング. 5(1). 1-6 (1996)
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[Publications] Tomita,Atsuhisa: "Removal after addition of NO-genemting agents and 8-bromo cyclic GMP cause morphological change of cultured cerebellar asttocytes" Brain Res.(in press). (1997)
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[Publications] Toda,Shoichi: "Optical study of central olfactory processing in the terrestrial slug" Neurosci.Res.S20. S223 (1996)
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[Publications] Suzuki,Yasuyoshi: "Effect of gastatory stimulation on the olfactory processing in the CNS of the terrestrial slug" Neurosci.Res.S20. S221 (1996)
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[Publications] Kimura,Tetsuya: "Change of activity patterm induced by learned odors in the olfactory center of a slug" Neurosci.Res.S20. S220 (1996)
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[Publications] Yamada,Atsushi: "A study of interactions between olfaction and taste in central nervous system of a slug" Soc.Neurosci,Abstr. 22. 1078 (1996)