1996 Fiscal Year Annual Research Report
オンコスタチンMによる細胞増殖抑制の分子機構と生理的役割
Project/Area Number |
08680760
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原 孝彦 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助手 (80280949)
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Keywords | オンコスタチンM / サイトカイン / サイトカイン受容体 / IL-6 / LIF |
Research Abstract |
オンコスタチンM(OSM)受容体は、IL-6のシグナル伝達分子であるgp130とLIF受容体ベータ鎖とから成るI型とgp130とOSM特異的受容体ベータ鎖とから成るII型の二種類の機能受容体を有することが、ヒトOSMを用いた研究で明かになっている。これがマウスOSMにもあてはまるかどうか、またOSMの生理的役割を探るために、様々なLIF反応性マウス細胞株に対する効果を検討した。その結果、マウスOSMはLIFの機能受容体に対しては低親和性でのみ結合し、増殖や分化シグナルを伝達しないことが判明した。一方II型受容体を発現すると考えられるNHI3T3細胞や後述のLO細胞には高親和性で結合し、低濃度でシグナル伝えた。このことはマウスにおいてはLIFとOSMは異なる受容体を使っていることを示し、これまでのヒトOSMを用いて行われてきた動物実験系での結果は再検討されねばならない。 OSMの生理的役割を明かにするために、マウスOSM cDNAと特異的抗体を用いてin situ hybridizationおよび組織化学的解析を行ったところ、OSMは胎生11-14日の生殖隆起部位、前腎、神経管、背根神経節および新マウス精巣に強い発現が観られた。そこで精製したマウスOSMをもちいて胎生11日大動脈・中腎・生殖隆起部位(AGM)領域を初代培養したところ、OSM依存的に敷石状細胞のクラスターとそれに続き多数の血球細胞が出現した。これらの血球細胞は形態的に未分化前駆細胞でありここには造血幹細胞の活性と考えられているCFU-Sが認められた。これらの細胞群はLIFやIL-6の添加では同程度には出現しないことから、OSM受容体が造血幹細胞あるいはそれを産み出す多能性細胞に特異的に発現しており、細胞増殖分化に働いていることが示唆された。さらに胎生11日AGM領域からOSM依存性細株、LOを樹立することに成功した。LOからは細胞密度があがると浮遊性の血球細胞が生じる。LOの細胞表面には幹細胞血球マーカーが発現しており、そこから生じた血球細胞はB220とThy-1というリンパ系マーカーが発現していた。このことはLO細胞株が造血幹細胞あるいはその前駆細胞であることを示唆する。 同様のOSM依存的細胞増殖は新生マウス精巣のセルトリ細胞でも観察された。OSMはセルトリ細胞が増殖している時期に発現し、増殖停止する生後8日以降では消失することから、セルトリ細胞のオートクライン増殖因子であると判明した。これらの実験結果はOSMの生理的役割が、胎生中期からの器官形成における各種の未分化前駆細胞の増殖分化過程にあることを示唆する重要な知見である。その点を明確にするために、マウスOSM受容体ベータ鎖遺伝子の分子クローニングを試みてきた結果、候補遺伝子断片を単離するのに成功した。また、来年度へ継続研究するために、OSMトランスジェニックマウスとOSM遺伝子ノックアウトマウスの作成準備を進めることができている。当初の研究目標であったOSMによる細胞増殖抑制のシグナル伝達機構については、上記のLO株とNIH3T3株との比較という形で今後進めていく予定であり、今年度はそのための細胞系の準備を完了することができた。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] M.Ichihara,T.Hara,H.Kim,T.Murate,and A.Miyajima: "OncostatinM and leukemia inhibitory factor do not utiltze the same functional receptor in mice" Blood. (in press). (1997)
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[Publications] T.Hara,M.Ichihara,and A.Miyajima: "Functional difference of the oncostatinM receptor between human and mouse" Leukocyte Typing IV. (in press). (1997)
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[Publications] A.Miyajima,T.Kinoshita,H.Wakao,T.Hara,et al.: "Signal transduction by the GM-CSF,IL-3 and IL-5 receptors" Leukemia. (in press). (1997)
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[Publications] T.Hara,M.Ichihara,A.Yoshimura,and A.Miyajima: "Cloning and biological activity of murine oncostatinM" Leukemia. (in press). (1997)
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[Publications] T.Hara and A.Miyajima: "Function and Signal transduction mediated by the interleukin-3 receptor system in hematopoiesis" Stem Cells. 14. 605-618 (1996)
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[Publications] Y.Morikawa,K.Tohya,T.Hara,T.Kitamura,and A.Miyajima: "Expression of IL-3 receptor in testis" Biochem.Biophys.Res.Commun. 226. 107-112 (1996)
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[Publications] A.Yoshimura,M.Ichihara,I.Kinjyo,M.Moriyama,et al.: "Mouse oncostatinM:an immediate early gene induced by multiple cytokines through the JAK-STAT5 pathway" EMBO J.15. 1055-1063 (1996)
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[Publications] T.Hara and A.Miyajima: "Function of the IL-3 receptor system in hematopoiesis" The NATO ASI Series H94:Gene Technology,ed:Zankerr/Ostertag/Afanasiev/Grosveld,Springer-Verlag,Berlin Heidelberg, 12(295-306) (1996)