Research Abstract |
東北大学老人科および米国Graduate Hospital (フィラデルフィア市)に外来通院または入院中のAD患者87名(平均年齢73.8±8.8歳),パーキンソン病(PD)患者13名(68.4±10.0歳),運動ニューロン病(MND)患者12名(66.2±8.2歳),進行性核上性麻痺(PSP)患者5名(66.8±5.0歳),脳血管障害(CVD)患者21名(67.8±10.6歳),AIDS患者4名(39.0±4.7歳),髄膜炎または脳炎(髄膜炎/脳炎)患者35名(33.9±14.8歳),てんかん患者6名(48.8±23.1歳),上記以外の神経疾患患者(他群)18名(57.7±16.0歳),および正常コントロール22名(48.2±20.1歳)を対象とした(計223名)。87名のAD患者の内訳は,1)男性35名,女性52名;2)65歳未満発症のearly-onset AD 28名(うち家族歴を有するもの5名),65歳以降発症のlate-onset AD 54名(うち家族歴を有するもの5名),発症年齢不詳5名;3)本邦のAD患者67名,米国のAD患者20名(白人16名,黒人3名,Native American 1名)である。CVD群は,すべて慢性期の脳血管障害患者を対象とし,髄膜炎/脳炎群では,タンパク・細胞数増加のもっとも著しい時期のCSFを分析対象とした。他群の内訳は,筋疾患患者4名,Creutzfeld-Jacob病患者3名,正常圧水頭症患者3名,多発性硬化症患者3名,急性小脳炎患者1名,神経梅毒患者1名,慢性炎症性脱髄性多発根神経炎患者1名,Bell麻痺患者1名,横断性脊髄炎患者1名およびビタミンB_<12>欠乏症患者1名である。 22名の正常コントロール群におけるCSF-tau値は,10.6±8.6Pg/ml(平均±標準偏差)であった。CSF-tau値は,加齢とともに緩徐に増加する傾向が見られた(Y=0.215X+3.43,γ=0.541, P=0.017)。これら正常者におけるCSF-tauは、髄液総蛋白量の約2×10^<-6>%を占めた。一方,図2に示すようにCSF-tau値はAD群で78.0±44.2Pg/ml, PD群で19.1±8.5Pg/ml, MND群で26.3±21.2Pg/ml, PSP群で20.1±11.6Pg/ml, CVD群で24.4±31.4Pg/ml, AIDS群で49.6±37.6Pg/ml,髄膜炎/脳炎群で30.1±43.4Pg/ml,てんかん群で14.2±10.6Pg/ml,他群で35.7±52.5Pg/mlであった(df=9,F-value 12.19, P<0.0001)。AD以外の神経疾患患者全体におけるCSF-tau値は,27.8±38.7Pg/mlでありAD群と比して有意な相違がみられた(P<0.001)。また,AD以外の神経疾患の中で,MND (1例), CVC (2例), AIDS (2例),髄膜炎/脳炎(4例), Creutzfeldt-Jacob病(3例),正常圧水頭症(1例)およびビタミンB_<12>欠乏症(1例)においてCSF-tauの高値が見られたが,これらの患者とADとの鑑別が臨床上問題となることも考えられる。血清tau値は,測定限界以下であった。
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