Research Abstract |
ラットは,薬物の毒性,薬効評価のための前臨床試験,微生物学的研究,発癌性実験,栄養学,生理学,学習行動学など広い分野の研究に用いられている。一方,これらの研究の基礎となるラットの解剖学書は,死体を固定し,イラスト化または一部写真画像として表示したものが多く,それらの画像だけでは,動物実験を行おうとする初学者にとって十分とは言い難い状況が想像された。また近年CT(computed tomography),超音波エコーおよびMRI(magnetic resonance imaging)等のコンピュータを利用した断層診断装置の発達により,生体内の情報が無侵襲に手に入るようになり臨床診断や研究に大きく貢献している。これらの画像解析には断面的・立体的な解剖学的知識がより一層要求される関係から,生体の情報が理解しやすいかたちの解剖学の参考書が要望されるようになってきた。本研究における成果の一つとして,実験動物用ラットの矢状断,水平断,前頭断(約1-3mm間隔で切断)および関連する肉眼写真を体系的に配列した解剖学のカラーアトラス集(実験動物の断面解剖アトラス・ラット編:チクサン出版,東京)を出版した。以下に本書の特徴を列記する。 1)無固定(凍結状態で切断,融解後写真撮影)で生体に近い状態の解剖カラーアトラスを作成し,生体の断面情報を研究する研究者の参考に成り得ることを計った。 2)図譜は全てカラー写真で構成し,またサイズもB4版と大型にし,細部まで検討できるように企画した。 3)カラー写真から線を引き出し,解剖名をカラー写真に接近して表記することで,参考とする臓器名や組織名が理解または検索できるようにした。 4)解剖名は日本語,ラテン語,英語を同時に表記し,読者が日本語のみならず他の解剖学名も同時に把握できるように企画し,索引は日本語,英語,ラテン語別に配し,何れの解剖学用語でも検索できるように企画した。 5)断面解剖と平行してマクロ解剖写真(無固定・解剖名付記)を配して,断面アトラス画像より理解しやすいように工夫した。
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