1996 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトおよび類人猿における意図的行為のメンタルシミュレーションの分析
Project/Area Number |
08710064
|
Research Institution | Oita Prefectual College of Arts and Culture |
Principal Investigator |
板倉 昭二 大分県立芸術文化短期大学, コミュニケーション学科, 助教授 (50211735)
|
Keywords | 心の理論 / 意図行動 / メンタルシミュレーション / チンパンジー / ニホンザル / グル-ミング |
Research Abstract |
近年、乳幼児における他者の心の理解に関する、いわゆる「心の理論」研究が盛んになってきた。心の理論とは、基本的には、他者にも"心"があり、自分と同じように信念や思考などを有するということを理解することである。本研究では、心の理論が成立する臨界的な時期である、3歳から6歳児を対象として、また比較発達的な視点からの考察をおこなうために、チンパンジーを対象として、「他者の意図のシミュレーション」に関する検討を試みた。また、ニホンザルの相互的なグル-ミングをメンタルシミュレーションと結び付けるため、ニホンザルのグル-ミング行動の発達についても検討を加えた。 まず、3歳から6歳の幼稚園児を対象として、色カード推測課題を用い、実験者が裏向きに呈示するカードの色を推測し、同じ色のカードを呈示されたカードに並べて出すことを求めた。このとき、実験者は条件に応じて、ほとんどインターバルを取りない、非意図的試行(NIC)と、5秒くらい呈示するカードを考えるふりをする意図的試行(IC)の2つの試行系列をおこなった。しかしながら、実際は両方の試行系列とも、「赤・黄」の繰り返しであった。この結果、被験児全体では、明らかにNICよりもICでの反応時間が長かった。しかしながら、そこには当然年齢差があり、6歳児では、NICとICでの反応時間にはそれほど差がなかった。6歳児においては、相手の出すカードを深読みして、単純なルール学習が阻害されたのかもしれない。 また、チンパンジーに関しては、カード課題遂行のためのマッチング訓練を現在もけいぞくちゆうである。ニホンザルのグル-ミングの発達に関しては、生後1歳から多少自分でもおこなうが、ほとんど受け身であり、3歳くらいになると、レシプローカルなグル-ミングが可能となるように見受けられた。また性差も見られた。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] 板倉 昭二: "高崎山ニホンザルにおけるグル-ミング行動の発達" 大分合同新聞社 月刊「ミックス」. 147. 154-157 (1997)
-
[Publications] 板倉 昭二: "幼児におけるメンタルシミュレーションの検討" 大分合同新聞社 月刊「ミックス」. 148. 156-159 (1997)
-
[Publications] 板倉昭二・凍田和美・佐藤植美: "霊長類におけるコンピュータの活用" 情報研報. 15. 85-90 (1996)
-
[Publications] S.Itakura: "Cross modal matchig memory in young children. An exploratory study with a long retention interval." Bulletin of Oita Prefectural College of Arts and Culture. 33(印刷中).