1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08710102
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
藤田 敦 大分大学, 教育学部, 講師 (80253376)
|
Keywords | 類推 / 専門性 / 仮説検証 / 文脈的固着 |
Research Abstract |
本研究は,自己の専門領域を基底領域とした類推が,専門性の成長過程においてどのように変化していくのかという問題を検討することを目的としている.基底領域に関する専門性が異なる3つの被験者群を設定し,4項形式の類推文生成課題(aとbの関係はcとdのようだ.なぜならeだから.)を実施した.なおその際には,被験者の十分な仮説空間の探索プロセスを保証するために,制限時間などの実験的な制約を可能な限り軽減した。類推課題は,収束-拡散の次元を操作し,利用できる目標領域の知識の選択範囲が異なるタイプの問題を設定した.実験の結果得られた主な知見は次の通りである.まず,拡散的な課題(類推文の作成に利用できる目標領域となる知識の選択が被験者の自由に任されている課題)では,類推文の生成量と専門性のレベル間に明確な関連性は見いだされなかったが,目標領域を探索していくプロセスに専門性の差による違いが見られた.専門性が高い群は,知識の探索範囲を自己の専門領域に固定してしまい,ヒントを与えるなどの外部からのプロンプトを与えない限り自発的には他領域の知識を利用できないという特徴が見られる.また,基底領域と異なる領域の知識を利用できた場合においても,それらの知識を対応づける関係性が,特定の関係性に固定されるという現象も見られた.次に収束的課題(目標領域がある程度規定されている課題)では,類推文の意味的な正しさが専門性の高さと正相関の関係にあること,類推文の生成量や知識の探索プロセスには専門性の差による違いが見られないことが分かった.これらの結果より,基底領域に対する専門性は,知識の探索プロセスおよび基底-目標領域間の関係性の認識に対して影響を及ぼすことにより,類推のパフォーマンスを左右していることが示唆された.今後は,専門性を適応性と形式性という両側面からレベル分けし,類推との関係性を探っていく予定である.
|