1996 Fiscal Year Annual Research Report
幼児期・児童期における心の理論・素朴人格理論:多面的自他理解の検討を通して
Project/Area Number |
08710106
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
遠藤 利彦 聖心女子大学, 文学部, 講師 (90242106)
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Keywords | 自己理解 / 他者理解 / 心の理論 / 素朴人格理論 / 関係性 / 幼児 / 児童 |
Research Abstract |
本研究は、幼児期から児童期にかけての、自己および他者理解の性質、および心的世界や人格に関する素朴理論の発達的移行を探ることを目的とした。従来の研究は、子1人1人の具体的・個別的対人関係の文脈を相対的に軽視してきており、彼らの日常生活における。現実の自己および他者、あるいは心理社会的世界に関する思考や推論の枠組みを必ずしも明確に取り出し得ていない可能性がある。そこで、本研究は個別面接を通して、子が日々生活する親近性の高い対人的環境についてどのような枠組みを有しているかを明らかにすることを目指した。具体的には、保育園年長(16名)、小学校2年(14名)、4年(15名)、6年(12名)の子に対して個別に面接を行い、これまでに一番うれしかったこと、悲しかったことなど、複数種の感情に結びついた記憶の想起を逐一求め、その中に、自己や他者が、どのような関係性をもって語られるかをまず取り出した。そして、子の語りの中に登場する、肯定的な他者、および否定的な他者、そして彼らと一緒にいる時の子自身の内的情感や人格などについて一連の質問を行った。まだ、全データに関する精細な分析を終えていないが、これまでに以下のような傾向が明らかになっている。(1)年齢の低い子は、自己や他者の内的属性、特に人格的特徴に言及することが少ない。好悪の感情の一次元をもって自己や他者の評価・判断を行うことが相対的に多い。しかし、これについては広範な個人差が認められる。既に就学前の段階で、多次元的に人格の抽出をする子も一定割合存在する。(2)発達早期には、肯定的な他者に関する人格的抽出の方が、量的にも質的にも豊かであるが、加齢とともに肯定的他者・否定的他者に関する叙述量・内容の多様性に差がなくなる。また、年齢が上がるにつれて、特に否定的な他者の内的属性に関して、自分寄りの否定な見方だけではなく、時に、客観的で公正な見方もすることが可能になる。
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[Publications] 遠藤利彦: "乳幼児期における自己と他者、そして:関係性、自他の理解.および理論の関連性を探る" 心理学評論. 40(1)(印刷中). (1997)
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[Publications] Sakagami,H.& Endo.T.: "Individual differences in taddlers' emotion regulation : The relationship between childrens' problem-focused coping style and materual response stratege" Annual Report Research and Clinical Center for Child Development. Hokkaido University,Faculty of Education. 19(印刷中). (1997)
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[Publications] 遠藤利彦: "喜怒哀楽の起源:情動の進化論・文化論" 岩波書店, 120 (1996)