1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08710138
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
加来 和典 宮崎大学, 教育学部, 助教授 (80214261)
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Keywords | 高齢者 / 生活構造 / 地域特性 / 山間地 |
Research Abstract |
本研究においては、山間地における高齢者の生活構造を比較研究し、山間地での生活継続を可能にする条件を総合的に探ることを目指した。 大分県中津江村では、村の概況を把握するために、村役場と合同のアンケート調査を実施した。同調査で山村社会の流動的側面が明らかになった。居住歴では「生まれてからずっと」とする人は41.5%と最も多数を占めるが、流入層は36.0%、Uターン層21.2%という結果が示された。この結果は「農山村=土着的社会」といった既成概念の再検討を要請している。また、土着性を前提とした地域福祉概念の検討をも要する。また、地区ごとに家族構成にかなりの差があることがわかった。聴き取りによれば、同村内にあった鯛也金山との関連が指摘されている。金山は昭和47年に閉山しており、その際、従業者の多くは流出していたが、そのまま定着した層もあり、その層のかなりの部分が現在高齢者一人暮らしとなっている。このような世帯は、とりわけ金山のあった鯛生地区に集中している。農家世帯を中心とする他地域とは地域特性の差が明瞭である。やや特殊な事例かもしれないが、地域特性の把握には細かな視点が必要なことが示唆された。さらに、高齢者生活福祉センターでの調査から、施設利用動向が明らかになってきた。入居者は必ずしも、入所前に一人暮らしであった人はわずかで、むしろ同居家族との関係は入所要因であることがわかった。 隣接する福岡県矢部村では、高齢者生活福祉センター、特別擁護老人ホームを核に「ゆいもりシルバ-ハウジングプリジェクト」が展開中である。老後の村内住居の可能性が高められており、これは高齢者家族のありように影響をあたえ始めているか、今後の継続的調査が必要である。 両地域での調査を通じて山間地の高齢者生活構造の共通点と地域的な差異について、いくつかの重要な知見が得られた。
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