1996 Fiscal Year Annual Research Report
18-19世紀転換期イギリスの貿易金融-フィリップス=ボディントン商会の活動
Project/Area Number |
08710257
|
Research Institution | Kyoto Prefectual University Women's College |
Principal Investigator |
川分 圭子 京都府立大学女子短期大学部, 講師 (20259419)
|
Keywords | イギリス史 / 近代史 / 経済史 / 経営史 / 商業史 |
Research Abstract |
すでに所有していたPhilips家の史料4巻約4000頁の焼き付けと、その読み込みを中心に作業を進めた。 本史料は、1801-1803年、海上保険業と受託販売業を兼業したGeorge Philips & Co.の残した帳簿(取引日記帳1、仕分帳2、元帳2、受取手形および支払手形記入帳各1、銀行帳1、領収書綴1冊)と商業書簡(イギリス、ヨーロッパ、アメリカおよび西インドに向けて、同社が出した書簡を写したノート6冊と、1802年の数カ月における同社宛の書簡とそれに対する返事の要約のノート1冊)を含み、これらの精読による同社の事業内容の解明が課題とされた。現在の時点で明らかとなった点と今後の課題を以下に簡単に述べる。 1海上保険業:同社は保険仲介業者であり、様々な船荷に対しアンダーライターを引き合わせて手数料収入を得ていた。イギリスを通過しない船、すなわちクロスの保険も引き受けている。事業をしていた2年間でほぼ270件の保険引き受けがあり、これについては全て整理は終了した。 2受託販売業:同社は自己勘定の商品売買取引は行わず、受託販売業に徹していた。同社の取引相手はハンブルク、アムステルダム、パリ、アメリカ東海岸諸都市中心に数百人に及び、商品もコーヒー、砂糖、リネン、小麦粉から奴隷と当時のあらゆる国際的商品を含んでいる。これらの取引の一部を復元することはできたが、G.Philips & Co.のビジネス網の全貌の解明には至っていない。 3決済:清算勘定を多用して複数の商取引の差額だけを為替で決済しているらしいが、帳簿にも省略が多く、それぞれの取引と手形を結びつけ、決済方法を復元するのは困難な作業であり、まだ進展していない。 なお以上の研究で解明された部分を、国際商業史研究会で1997年3月1日発表した。
|