1996 Fiscal Year Annual Research Report
国語史資料としての密教関係伝授聞書類の発掘と資料的性格についての研究
Project/Area Number |
08710277
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
土井 光祐 北海道大学, 文学部, 助手 (20260391)
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Keywords | 国語研究資料 / 鎌倉時代語 / 伝授聞書類 / 高山寺 / 仁和寺 / 中世語 / 密教 / 注釈 |
Research Abstract |
国語史資料として利用し得る新たな密教関係伝授聞書類を発掘すべく関西を中心とする古社寺、各所蔵機関の実地調査を行い、書誌調書の作成、写真撮影、本文転写を行って、資料の成立背景についての基礎的な分析を行い、国語史資料としての性格を考察した。 主な調査機関は、東大寺図書館、仁和寺、神奈川県立金沢文庫、随心院、高山寺である。 密教関係伝授聞書類は、密教の師資相承の中で成立するものなので、この観点から成立背景を確認することは不可欠の作業となる。特に、高山寺、仁和寺については、これまで相当に研究が進められてきており、その成果を参照しつつ個々の調査資料をその中に位置付けていくことを並行させつつ考察を進めた。この為には同一の教学環境で成立する関連諸資料との関係を確認することが必要であって、「金剛界念誦次第」「胎蔵界念誦次第」等の「次第」類や、諸尊法の類の加点本も併せて調査した。 この過程でいくつかの重要資料を発掘することができたが、中でも仁和寺蔵「金剛界注」鎌倉時代初期写本は金剛界念誦次第の注釈書であって、仁和寺中興の祖である守覚法親王の自筆になるものであり、特に注目される。注釈には片仮名交り文も使用され、非常に詳細な墨点(仮名、ヲコト点(円堂点)、返点、声点、合符)が加えられている。一般に密教事相関係書で字句の訓詁注釈を行うものは極めて稀であるが、本資料によって従来確認の困難であった事相上の術語の鎌倉時代初期における確実な訓法が初めて確認される場合も多く、又、片仮名交り文の中には「ドコ」「デ(格助詞)」等、平安時代には一般に稀な新語の使用も認められる。本資料については、『訓点語と訓点資料』第99輯(平成8年3月発行)に全文の影印、翻字及び解題を掲載した。
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Research Products
(2 results)