1996 Fiscal Year Annual Research Report
30年代上海のモダニズム運動に関する研究-「中華独立美術協会」「決瀾社」の動向を中心に
Project/Area Number |
08710308
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
牧 陽一 埼玉大学, 教養学部, 助教授 (40241921)
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Keywords | 30年代 / 上海 / モダニズム / 中華独立美術協会 / 決瀾社 |
Research Abstract |
研究計画に従って、資料の収集、新資料の発掘、集中、分析を行うとともに、研究のとりまとめを中心として、作業をすすめた。(1)30年代の芸術動向に関する基本的な資料『民国時期総書日』『中国文学芸術社団流派辞典』『上海油画史』等の購入、複写、整理。(2)「決瀾社」の活動に関する基本資料『芸術旬刊』等の複写、整理。(3)「中華独立美術協会」の活動に関する基本資料『芸風』『芸術月刊』『芸術与教育』等の複写、整理(4)「決瀾社」の成員、〓薫〓、倪貽徳ら個人に関する画集、伝記等関係文献の購入、複写整理(5)「中華独立美術協会」の成員梁錫鴻・李東平ら個人に関する随想録等関係文献の購入、整理(6)日本留学中の李東平、倪貽徳らに関する関係文献の複写整理。 以上の作業により、上海を中心とした30年代の芸術状況に於けるモダニズム運動の果たした役割が、一部明らかとなった。しかしあくまでもその一部が明らかとなったにすぎず、その全体像としては、不十分と言わざるを得ない。こうした上海の30年代のモダニズム運動を調査していく過程で、この頃すでに広告を中心として大衆芸術(今日のポップ・アート)の萌芽がみられること、また一方では「芸風」雑誌等が「民間芸術特集」を組み、(1932年)農村芸術の再発見を促していたことが明らかとなった。こうした当研究の副産物は、都市知識人の芸術運動のみを対象とするという狭隘な研究のあり方を大いに反省させた。これまでのモダニティーの有無に偏りがちな芸術研究を中国伝統文化内の「民間」そして都市「大衆」芸術の方向から捉え直し、再構築していく必要がある。今後も作業を継続し、以上の観点をもとに細部にわたる事実を検討し、整理していくことが重要である。すでに発表した論文は、別の項にまとめたが、以上の資料の分析等については、何らかの形で公表を計っていきたい。 (尚本研究については、中国芸術研究院美術)研究所、陶咏白女史、郎紹君、栗憲庭両氏、北京語言文化大学盛成教授にレビューを受けた)
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 牧陽一: "「星星画会」と「今天」-チャイナ・アヴァンギャルドの系譜" 財部鳥子・是永駿・浅見洋二訳編『現代中国詩集』-チャイナ・ミスト』(思潮社). 140-155 (1996)
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[Publications] 牧陽一: "中国シュルリアリズムノート-啓蒙・理性・反理性" 現代中国(日本現代中国学会). 第70号. 262-270 (1996)
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[Publications] 牧陽一: "分裂する表象-ポスト'89中国モダンアート" 中国研究月報(中国研究所). 第50巻6号. 7-18 (1996)
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[Publications] 牧陽一: "中国現代アートの世代-二つの美術展から" 中国文芸研究会会報(中国文芸研究会). 182号. 1-6 (1996)