1996 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀アメリカ小説におけるポストモダン時代の男の自己形成
Project/Area Number |
08710329
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
杉野 健太郎 広島大学, 総合科学部, 助教授 (40216320)
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Keywords | 自己形成 / アメリカ文学 / 男 / ジェンダー / ポストモダン / 20世紀 / アメリカ |
Research Abstract |
第一次大戦が終わり西欧の価値観が大きく揺らいだ時代のヘミングウェイにおいては、一種の虚無感の克服が男性の自己形成と深く結びついており、その自己形成は女性を排除することによって達成されると結論できる。時代の寵児であり実生活でも女性に支配されたフィッツジェラルドの作品おいては、精神分析用語で言えば母親による全能感をもった自己がいわばバフルの時代である第一次大戦後の時代から大恐慌という試練を経て自己を形成するのが読み取れる。トマス・ウルフに関しては、まだ結論がでていない。 次に、西洋的価値観を瓦解させたもう一つの大戦である第二次世界大戦期以降の時期のユダヤ人作家ソ-ル・ベロ-に関しては、社会の抑圧(その最たるものがユダヤ人差別)から逃れ(不可知だが超越的な真理を信じ)ることによって自己形成がなされると結論した。サリンジャーにおいては、高度資本主義社会から隠遁することによって自己が形成される。I・B・シンガー、フィリップ・ロス、黒人作家ラルフ・エリソン、ボールドウィン、トル-マン・カポ-ディに関しては未だ結論がでていない。 60年代という大混迷の時代以降の作家ジャック・ケルアックにおいては、西洋文明の既成の伝統から逃れることによって自己が形成される。また、ジョン・アップダイクにおいては、父権的価値観が揺らぐ社会が自己形成に反映していることを結論付けた。 最後に同時代のP・オースターの自己は、余りに曖昧で浮遊しているようなもので形成されているとは言えず、いわば幽霊的な自己であると結論付けた。E・ホワイト、F・バ-セルミ、J・マキナニ-に関しては、まだ結論が出ていない。
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