1996 Fiscal Year Annual Research Report
世界貿易機関の下で21世紀に向けての国際経済体制と法秩序
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08720041
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
瀬領 真悟 滋賀大学, 経済学部, 助教授 (90192624)
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Keywords | WTO / 反ダンピング法 / ダンピング / 損害 / 迂回防止 / ウルグアイ・ラウンド |
Research Abstract |
本年の課題は、第一にウルグアイ・ラウンド交渉史を踏まえたWTO協定の規範内容と構造及び主要加盟国の協定実施の特徴と問題点の解明、第二にWTO主要加盟国の通商法制度及び法運用の内容と課題の解明である。 第一点に関しては、成立した既存合意改正と新分野合意を、貿易自由化と自由化担保のための規律強化という視点で評価した場合、達成度は分野毎に異なる。達成度の高い分野は紛争解決分野であり、低いのは反ダンピング法分野である。反ダンピング法分野の新協定は、交渉参加国の利害対立を反映し法利用促進と規律強化の両面を織り込んだ妥協の産物で曖昧な面も残った。利用促進面では、累積制度の要件等で米国等の国内法既存制度が取り込まれている。加盟国実施法を主に米国と欧州連合を中心に検討した。米国では包括的実施法と詳細な国内法実施規則が規定され、WTO協定との整合性上の問題点等が比較的明解な部分もある。欧州連合法は米国法に比べて明文規定の詳細性を欠き、法文上の検討のみならず法運用の確認にまで至らない問題点が解明しにくい。 第二点に関しても、米国と欧州連合の反ダンピング法を中心に検討した。WTO成立は、加盟国通商法に変化をもたらしたが、反ダンピング法での変更程度は制度により異なる。WTO協定に従って明確化された制度として、提訴適格やダンピング認定における価格比較の公正性確保措置等がある。しかし、米国法におけるサンセット条項等のようにWTO協定の趣旨とは異なる制度運用が可能ではと思われる改正が行われたものもある。損害要件等の解釈に関しては、統一が計られておらずWTO成立前からの問題点の継続が予見される。また、WTO協定に明文化されなかった迂回防止規定がさらに整備されている。これらの規定がどのように解釈運用されるかが今後の課題である。
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