1996 Fiscal Year Annual Research Report
現代リベラリズム論の批判的再構成:ロールズ以降のアメリカを手がかりとして
Project/Area Number |
08720057
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
飯田 文雄 神戸大学, 法学部, 助教授 (70184356)
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Keywords | リベラリズム / ロールズ / 共同体論 / アメリカ政治思想 |
Research Abstract |
本研究は、ロールズ『正義論』刊行以降のいわゆる「正義論・リベラリズム論争」の全体像とその思想史的意義とについて、多様な比較思想史的検討を行うことにより、現代リベラリズム論を批判的に再構成することをその全体的目標として行われた。かかる目的達成のたま、本研究ではより具体的に、(1)1980年代後半以降台頭した、ス-ザン・オキン、ウィル・キムリカらリベラリズム第二世代の所説を、ロールズ、ドゥオ-キンらリベラリズム第一世代、共同体論、及び完全自由主義等、アメリカ内部の諸論者の議論と対比させ、検討する作業(2)今日の「リベラリズム論争」全体がどの程度特殊アメリカ的性格を有するものであるかについて解明するため、現在ヨーロッパにおけるリベラリズム研究の現状について概観する作業(3)「リベラリズム論争」の諸成果の、日本社会への適用可能性を解明するため、今日の日本におけるリベラリズム研究の現状を整理する作業という3つの作業に従事した。その結果、(1)第一の、アメリカ内部における議論の再整理作業を通じて、オキンらリベラリズム第二世代において顕在化した、家庭・少数文化集団等の諸共同体に対する関心が、第一世代の近年の議論にも反映される一方、共同体論の側では、リベラリズム論が提起した善・価値の多元的共存の問題に対する関心の高まりが看取され、この意味において、リベラルと共同体論のいわば相互浸透現象が観察されること(2)更に、第二・第三の、ヨーロッパ及び日本のリベラリズム論研究の現状との比較という作業からは、リベラリズム第二世代に典型的な、かかるリベラリズムの共同体指向性・文脈化とでも言いうる問題に対して、近年次第に関心が高まりつつあること、という二つの点が新たな知見として確認された。なおこれらの研究成果については、アメリカ政治学会における報告を行った他、現在神戸法学雑誌に論文を公表すべく準備中である。
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