1996 Fiscal Year Annual Research Report
交易条件変化が途上国経済に与える経済諸効果を多面的に定量化する新手法の開発と応用
Project/Area Number |
08730037
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Research Institution | Nagoya Gakuin University |
Principal Investigator |
小井川 広志 名古屋学院大学, 経済学部, 助教授 (50247615)
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Keywords | 交易条件変化 / 円高 / 産業連関分析 / 利潤率 / 相対価格 |
Research Abstract |
本研究の目的の一つは、交易条件変化が経済に与える経済諸効果を、産業連関表を用いてより多面的に定量化する点にある。輸入依存度が相対的に高い産業では、輸入財価格の上昇により利潤率が圧迫され、付加価値率を一定とするこれまでの産業連関分析の仮定は満足されない。そこで、利潤率変化、相対価格変化を内生化した計量モデルを開発することが、本研究の出発点となる。本研究の第2の目的は、85年以降の円高がアジアNIESなどの対日輸入依存度の大きい経済にこの計量モデルを適用して、実証研究を行う点にある。 以上のような問題意識に基づき、本研究では、台湾経済をケーススタディとして取り上げ、円高が与えた経済効果を85年産業連関表を用いて定量的に検証した。その結果、以下の2点が明らかとなった。第1に、プラザ合意以降の円高は、台湾産業全体の利潤率を大きく引き下げた点である。80年代後半に、台湾元は日本円に対し約31.8%切り下がったが、かかる輸入財の価格上昇は、台湾諸産業の利潤を大きく圧迫した。本研究の計測では、各部門の利潤率低下割合は、4.17%と計算された。この数字は、台湾国家6カ年計画の社会的資本建設がもたらすであろう利潤引き上げ効果を、相殺して余りあるほどのマイナス効果となる。 第2に、台湾の対日経済従属性が、改めて確認された。すなわち、台湾元が日本円に対して大きく切り下がったことにより、台湾の成長産業である輸出産業の相対価格が、目立って上昇することがわかった。具体的には、電気機械、電子機器、輸送機械、プラスティック製品などに価格上昇の効果を与えた。このことは、これらの諸産業が、労働者の消費も含めて直接、間接的により大きく日本からの輸入財に依存していることを意味している。試みに、台湾元の全般的な減価による相対価格の変化をシミュレーションしたところ、石油精製や製材業などの相対価格の上昇が観察された。日本から輸入財が、台湾の輸出産業に集約的に投入されている事実が、かかる実証結果の比較からも伺える。 本研究の成果は、既に英文にて学内の紀要に公表されたが、本研究の適時性から鑑みて、将来的により一般性を広げる余地がある。現在、本実証結果を韓国との比較研究に拡張し、かつ最新の産業連関表を用いた分析が進行中であり、近々国際的な学術ジャーナルに投稿の予定である。
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Research Products
(1 results)