1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08730090
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
葛山 康典 早稲田大学, 社会科学部, 講師 (10257222)
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Keywords | 財務管理 / 企業財務論 |
Research Abstract |
本研究では証券価格の形成過程を投資家間の情報非対称性の視点から分析した。ここで、投資家の情報非対称性に関する代理変数として、Karpoff(1985)のモデルに基づいて、証券評価のばらつきや、改訂量の大きさ、その順位相関を用いてた。このモデルは市場で観測される証券収益率の分布が、正規分布に比して尖っているという混合正規分布仮説に対して整合的である。混合正規分布仮説は、ひとつの情報が証券収益率に与える影響は平均ゼロの正規分布に従うと仮定し、この影響が累積され収益率分布が正規分布にたいして大きな尖度をもつようになると解釈されている。 本研究では、投資家の情報非対称性の尺度として、アナリストの業績予想値を用いた。このようなデータは、従来利用可能ではなかったが、近年データベース化が進んでいる。これらのデータを用い、出来高との関係に基づいて価格形成と情報非対称性の関係を検討した。その結果、情報非対称性の尺度のうち投資家間の評価のばらつきや、評価の改訂量が有意に価格形成に影響を与えているという結論が得られた。またKarpoffモデルでは通常のワルラス均衡が想定されていない。つまり投資家はあらかじめ定められた投資家とだけ取引が可能であるという、投資家間のランダムマッチングが仮定されている。本研究では、投資家間のランダムマッチングの仮定は受容されない場合があることが示された。そこで、Karpoffモデルにワルラス均衡を導入したモデルについても検討を加えた。 また、ポートフォリオベースとして投資家の価格評価行動を考えた場合に問題となる、取引コストについても取り扱った。ここでは、ポートフォリオのリバランスを通じた数値計算によって価格評価の上界と下界が導出された。
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