1996 Fiscal Year Annual Research Report
わが国の財務諸表監査で展開されているリスク・アプローチの再検討
Project/Area Number |
08730092
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
石原 俊彦 関西学院大学, 産業研究所, 助教授 (20223018)
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Keywords | リスク・アプローチ / 監査危険 / 監査リスク |
Research Abstract |
グローバな規模で各国の財務諸表監査において展開されている監査リスク・アプローチの実態と、それがどのような形でわが国の監査実践に導入されているかを、わが国の公認会計士に対するヒアリング調査を通じてあきらかにした。ヒアリング調査は、わが国における国際的な監査法人である監査法人トーマツ、朝日監査法人、中央監査法人、大田昭和監査法人、センチュリー監査法人に所属している公認会計士を中心に、約50人に対して実施した。その結果、(1)監査リスク・アプローチは公認会計士が監査意見を形成する際の概念的アプローチとしてわが国の実務上も受け入れられていること、(2)アメリカやカナダといった監査の先進国と比較するとわが国の監査実践において監査リスク・アプローチが導入されている割合は相対的に低いと思われること、(3)わが国では監査リスク・アプローチを補完する特有の監査手法が展開されていること、(4)最近の企業不祥事の発覚に対応して、わが国の公認会計士の間には監査リスク・アプローチを自らが実施した監査意見形成プロセスの正当性を立証する手だてとして利用する思考が深まってきたこと、(5)日本公認会計士協会は監査リスク・アプローチの論理を監査基準委員会報告書に組み込み、わが国の公認会計士に対する監査実務規範として積極的に取り入れようとしていること、などが明らかにされた。 わが国の企業のなかには国際的優良企業が数多く存在する。企業ビジネスの世界では、わが国は世界を先導する立場にあるといえよう。それに対して、わが国の監査制度はいまだ、監査の先進国の成果を吸収している最中である。この過程で、わが国の監査実践が今後どのように展開されていくのか非常に興味深いところである。
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