1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08740169
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
穂積 俊輔 滋賀大学, 教育学部, 助教授 (90229203)
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Keywords | 恒星系力学 / 分布関数 / 位相空間 |
Research Abstract |
N体計算と同様に粒子を使用する方法で、無衝突恒星系の位相空間を再現する方法を考案した。この方法の信頼性を確かめるために、球対称を仮定し、ここでの方法で再現された位相空間と、無衝突Boltzmann方程式を直接数値積分する方法によって得られた位相空間を比較した。モデルは、一様密度球で速度分布はMaxwellianとし、初期ビリアル比を1/2とした。そのcollapseの時間進化を適当な時間ごとに位相空間を両方の方法で再現して比較した。 まず、位相空間を再現するために、系の密度とポテンシャルを適当な基底関数系で展開して、ポアソン方程式を解く必要があるが、使用する基底関数系によっては位相空間の構造に非物理的な影響が現れることがわかった。これは、Hernquistモデルに基づいた基底関数系では中心部で力が正の領域が現れるためで、角運動量の小さな星は中心部で一種の散乱を受けることになり、位相空間の構造が乱されることが明らかになった。しかし、力が正になる領域は中心部の非常に限られた部分ため、質量のほとんどを占める星が持つ角運動量範囲では全く影響がないこともわかった。一方、Plummerモデルに基づいた基底関数系では、中心部に特異性がないので、全ての角運動量の位相空間に対して、無衝突Boltzmannシミュレーションから得られる位相空間と非常によく一致した。分布関数自身についても基本的に、ここで用いた方法でよく再現されることがわかった。このことは。基底関数系で展開するシミュレーション法では星の軌道が十分な精度で追跡されていることを意味するものである。従って、この方法は、星の軌道分類にも応用できることがわかった。なお、結果はすでに論文にまとめ、The Astrophysical Journal誌に投稿している。
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