1996 Fiscal Year Annual Research Report
高感度ラマン分光法によるシリコン表面のエッチング機構の研究
Project/Area Number |
08740239
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
佐野 陽之 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 助手 (80250843)
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Keywords | シリコン表面 / エッチング / ラマン分光 |
Research Abstract |
フッ酸系溶液によるシリコン(Si)のエッチング機構を完全に理解することを目的に、本研究ではSi表面終端水素の水素振動のラマン観測を行った。特に、重水素を含む溶液を用いて、エッチングの進行に伴う表面終端水素の水素-重水素置換の過程をラマン分光法により観察し、選択的にエッチングされる部位を特定することを目指した。 まず、表面からの微弱なラマン散乱光を検出するための高感度ラマン分光システムの構築を行った。 次に、ラマン分光システムの評価も兼ね、フッ化アンモニウム溶液(pH=8)でエッチングしたSi(111)単結晶基板のラマン観測を行ったところ、2082cm^<-1>にモノハイドライド(Si-H)の伸縮振動がはっきりと観測され、シリコン表面は原子レベルでフラットな状態であることが確認された。本研究の実験手法を実現するには最初にSi表面を重水素で終端させておく必要があり、そのために重水中でのボイリング法を用いることにした。このための基礎技術を確立する目的から、まず軽水中でのボイリングによるSi表面の水素終端について調べた。その結果、水中の溶存酸素を0.1ppm以下に抑え、加熱もSi表面に気泡が発生しない程度の比較的マイルドな条件にすると、Si(111)表面をほぼ理想的なモノハイドライドで終端することが出来ることが分かった。 この結果をもとに重水中でのボイリングをしたところ、Si(111)表面を重水素で終端することができた。ただし、Si-Dのラマン散乱強度がSi-Hに比べて小さく、理想的な重水素終端が実現されていない。この原因として、使用した重水中の不純物の影響が考えられる。 今後の研究は、高純度に精製した重水を用いて完全な重水素終端Si表面をつくり、当初の目的である同位体置換によるSiエッチング部位の特定を行う方針である。
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