1996 Fiscal Year Annual Research Report
角度分解型トンネル分光による擬二次元物質の電子状態の異方性の観測
Project/Area Number |
08740253
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
宮原 陽一 早稲田大学, 理工学部, 助手 (80277839)
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Keywords | 角度分解型トンネル分光 / トンネル分光 / CDW / 遷移金属ダイカルコゲナイド / TiSe_2 / 1T-TaS_2 / 異方性 |
Research Abstract |
結晶の電子状態の異方性を調べる能力を有する,新しいトンネル分光法である角度分解型トンネル分光(ARTS)法を実証することを目的として,擬二次元的な電子状態をもつ遷移金属ダイカルコゲナイド(MX_2)であるTiSe_2および1T-TaS_2のcommensurate-CDW(CCDW)相に対して,77KにおいてARTS測定を行った。多くのMX_2においてCDWが存在することはよく知られているが,低次元物質であっても,現実に存在する物質は必ず三次元性をもつために,フェルミ面のネスティングがフェルミ面の全面で起こることはなく,そのためにCDWギャップは波数空間において異方性を有することが期待されるが,このギャップの異方性の観測例はこれまでほとんどなかった。 TiSe_2-TiSe_2の場合,トンネルスペクトルは結晶軸相対角に強く依存し,60°対称性を示すことが明らかになった。そして,得られたトンネルスペクトルを,6回対称な異方性をもったバンドモデルと横方向波数保存則とを仮定したモデル計算結果にフィッティングすることにより,CDWギャップの異方性およびギャップ端構造を定性的に得ることができた。一方,1T-TaS_2-1T-TaS_2の場合,トンネルスペクトルの角度依存性はTiSe_2の場合と比較すると小さかった。これは1T-TaS_2のCCDW相におけるネスティングがTiSe_2に比べて完全であり,フェルミ面のほぼ全面においてギャップが開いており,CDWギャップの異方性が小さいことを意味している。また,1T-TaS_2の場合の方がTiSe_2と比べて,ギャップ内の状態密度が小さいことも観測された。こららの事実は,両物質の転移点での抵抗率-温度特性の質的な違いとも対応しており,妥当な結果であると言える。 このように,波数空間における電子状態の異方性を調べる上での,ARTSの有効性が実証された。
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Research Products
(1 results)