1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08740279
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山本 昌司 岡山大学, 理学部, 助教授 (90252551)
|
Keywords | 低次元磁性体 / 量子揺動 / スピン格子相互作用 / 臨界現象 / ハルデイン磁性体 |
Research Abstract |
全般に一次元反強磁性体の低温量子物性を、量子モンテカルロ法、転送行列法などの統計力学的手法を用いて研究した。当初の研究計画を遂行する中で議論は多様性を帯び、現象、方法論の両面において、新たな方向性を打ち出すこともできたものと認識している。 スピンと格子の協力現象を系統的に研究する立場から、まず断熱近似の範囲内で、量子揺動や臨界現象を議論した。そこでは1/2から2までの広範なスピン量子数を取扱い、基底状態の性質や低励起構造が、量子性の強い場合から古典的描像に近づいてゆく中で、どのように変化してゆくかが明らかにされた。格子に誘起される交換相互作用の空間的変調を考慮し、その関数としての基底状態の性質を議論した。こうした系ではスピン量子数に依存する一定の規則に基づく相転移が観測されることが検証された。この一連の理論は、現在少しづつ実験研究にもフィードバックされ、結合交替系での相転移を陰に陽に観測しようという試みが始まっている。一方でS=1スピン鎖の基底状態量子揺動を議論した。これは量子揺動を、変分的解析手法で計算する一方、量子モンテカルロ・スナップショットを用いて視覚化、検証するというユニークなもので、現象としての興味もさることながら、今後の低次元量子物性研究における方法論的新たな可能性も提起するものである。 さらに、断熱近似を越えて格子揺動を議論すべく、経路積分に基づきスピン、格子の自由度を同時に量子化する、量子モンテカルロ・プログラムをスピン量子数が1/2の場合について作成した。当初想定したよりも、プログラム・アルゴリズムは複雑化したため計算時間は長期化し、現在も東京大学物性研究所の大型計算機を使用して計算を続けている。そうした中で、低温において自発的に格子が歪む様子が既に観測されており、スピン Peierls 転移のより直接的議論に道が開かれつつある。
|
-
[Publications] S.Yamamoto: "Spin Correlations and Haldane Gap in the S=2 Antiferromagnetic Heisenberg Chain" Physics Letters A. 213. 102-106 (1996)
-
[Publications] S.Yamamoto: "Quantum Fluctuations in the Ground State of the S=1 Antiferromagnetic Heisenberg Chain" Physics Letters A. 225. 157-166 (1997)
-
[Publications] A.K.Kolezhuk,H.-J.Mikeska,S.Yamamoto: "Matrix Product States Approach to the Heisenberg Ferrimagnetic Spin Chains" Physical Review B. 55. 3336-3339 (1997)
-
[Publications] S.Yamamoto: "Phase Transitions in Antiferromagnetic Quantum Spin Chains with Bond Alternation" Physical Review B. 55. 3603-3612 (1997)