1996 Fiscal Year Annual Research Report
不純物周囲の超伝導状態、特に秩序パラメータの空間変化を取り扱う新しい理論の開発
Project/Area Number |
08740309
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大橋 洋士 筑波大学, 物理学系, 助手 (60272134)
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Keywords | 超伝導 / 時間反転対称性 / 自発電流 |
Research Abstract |
超伝導状態における不純物効果を研究、以下の成果を得た: (1)秩序パラメータの空間変化を扱う方法を研究、従来の準古典Green関数に加え、散乱の中間状態を記述するGreen関数を導入することで、秩序パラメータの空間変化をセルフコンシステントに決定できることを見出した。入射電子に対し、散乱状態をどの散乱角度のものまで取り入れるかに関し課題が残っているが、それを克服することで、本研究申請後、前年度中に完成した実空間対角化からのアプローチ(Y.Onishi,Y.Ohashi,Y.Shingaki and K.Miyake:J.Phys.Soc.Jpn.65(1996)675.)より、細かいエネルギースケールを扱う事が可能になる。例えば、超伝導状態密度は、実空間対角化ではそのエネルギー分解能の悪さからギャップ内の不純物準位を特定することが困難であるが、今回研究した方法では準古典理論に基づいている為、ギャップ内の微細構造を計算できる。 (2)本研究課題の目的の一つ、時間反転対称性の破れた超伝導状態出現時における自発電流発生の可能性を一般的立場から研究した。従来、この種の超伝導状態では全電流有限の自発電流が生じるであろうことが理論的に予想されていた。これに対し、本研究はたとえ上記超伝導が実現しても全電流有限の自発電流は生じ得ないことを証明した。両者の不一致は、従来の理論がBCS超流動がないものとして議論していたことに因る。即ち、本研究成果は、上記超伝導においては、従来無視していたBCS超流動を加味しなくてはならないことを明らかにした。この問題は(1)にも関係しており、今後、超流動状態を如何に取り込むか、検討が必要である。
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