1996 Fiscal Year Annual Research Report
レーザーパルス温度ジャンプ法を用いた構造ダイナミクスの協同性に関する研究
Project/Area Number |
08740472
|
Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
水谷 泰久 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (60270469)
|
Keywords | 温度ジャップ法 / ラマン分光法 / 蛋白質ダイナミクス |
Research Abstract |
まず、昨年度製作したヒ-ティングパルス発生装置の改善を行った。ヒ-ティングパルスの発生には現有のQ-スイッチNd:YAGレーザー(パルス幅10ナノ秒)を用い、この基本波(1064nm)を高圧(約20気圧)の水素ガスセルに入射し、水素分子の誘導ラマン散乱によって1.9ミクロン(1次のストークス光)のパルス光を得た。水は近赤外領域(〜2ミクロン)に強い吸収帯(〜20cm-1)を持つので、この付近の波長で水を振動励起すると、直接溶媒である水の温度を上げることができる。今回は約10%の発生効率でヒ-ティングパルスの発生に成功した。このようにエネルギーとしては本研究に必要なレベルは得られた。しかし、用いたNd:YAGレーザーのビームパターンが悪いため、発生したヒ-ティングパルスのビームパターンが非常に悪く問題となった。ビームパターンの良いNd/YAGレーザーが今後利用可能になるので、それを用いればこの問題は解決できると考えられる。 試料の温度上昇を、ラマンスペクトルのストークス光とアンチストークス光の強度比から求めることを試みた。ストークス光とアンチストークス光の強度比は系のボルツマン分布によって決定されるので、なんら仮定をはさむことなく試料の温度を決定することができる。本研究では狭帯のカットフィルターを用いることにより、水溶液中の無機塩のストークス線とアンチストークス線を同時に測定した。現在のところヒ-ティングパルスのビームパターンが良くないために、プローブパルスとの空間的オーバーラップが良くない、また光子密度が高くなりセルにダメ-ジを与えてしまう、などの問題のために精度のよい測定ができていない。ただし温度上昇が起きていることは熱レンズ効果の存在によって確認できている。前記の問題を解決し次第、すぐに蛋白質の構造緩和の実験に取りかかる予定である。
|