1996 Fiscal Year Annual Research Report
ジフェニルエーテルの光転位反応における磁気同位体効果の測定
Project/Area Number |
08740505
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
芳賀 尚樹 北里大学, 薬学部, 助手 (80245422)
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Keywords | ジフェニルエーテル / 光転位反応 / 磁気同位体効果 / ラジカルイオン対 / 内部磁場 / 項間交差 |
Research Abstract |
筆者は,光化学反応におけるラジカルイオン対の関与を裏付ける確実な証拠として,^<13>Cを使った磁気同位体効果(MIE)の測定を計画した.モデル反応として,ジフェニルエーテル(1)が光開裂して,2-(2),4-フェニルフェノール(3)とフェノール(4)に変換される反応を選んだ. まず,申請時での予定を変更して,2-^<13>C-アセトンを出発物質にて,1,1′-[^<13>C_2]-1を7段階,総収率9%で合成した.これと無標識の1を使って溶液中で光照射し,未反応の1と転位生成物である2と3を単離して,各々の^<12>Cと^<13>Cの同位体比をマルチスキャン質量スペクトルで定量した.MIEは反応の進行度に依存するので,照射時間を変えることでさまざまな変換率における反応の相対速度を測定したところ,わずかではあるが[^<13>C_<12>]-1は無標識の1に比べて転位反応生成物(2,3)の収率が低く、散逸生成物(4)の収率が増加していることがわかった.計算されたMIEは0.72±0.45%である.この結果は,"[^<13>C_<12>]-1は^<13>Cの作りだす内部磁場によって1重項から3重項への項間交差が促進されるために,散逸生成物の収量が増加し転位生成物の収率が増加する."という当初の予想と矛盾しない.しかしながら,観測されたMIEは非常に小さく,また測定誤差も大きいので,現在,さらに測定回数を大幅に増やすことで精度の高い値を求めようとしているところである.研究期間が短い理由もあってこの結果は未発表であるが,正確なMIEが求められた後に然るべき雑誌に投稿する予定である.また,申請書で述べた結晶中の反応のMIEや,外部磁場の影響についてもできるだけ速やかに行いたい.
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