1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08740517
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
小澤 智宏 名古屋工業大学, 工学部, 助手 (70270999)
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Keywords | シデロフォア / 三脚トリスヒドロキサム酸型化合物 / X線結晶構造解析 / 鉄(III)錯体 / 水素結合 / トリス型錯体 / 錯体の安定化 / 加水分解 |
Research Abstract |
本研究では、新規金属輸送配位子を合成しこの金属錯体の構造および安定性について検討を行うことを目的とした。まず、かび・細菌あるいはイネ科の植物が生体内必須元素である鉄イオンを捕集するために放出するキレート化合物(シデロフォア)に着目し、配位子の設計を行った。配位子はTRENから誘導した三脚トリスヒドロキサム酸型化合物であり、末端にアセチル基を有するものとベンゾイル基を有するものの2種類を合成した。これらの鉄(III)錯体を合成し、得られた単結晶についてX線結晶構造解析を行ったところ、ともに3つのヒドロキサム酸骨格が配位した六配位八面体型鉄(III)錯体であることがわかった。ここで配位したアミノヒドロキシル酸素原子と、ヒドロキサム酸をTRENに結合させるために導入したアミド基のプロトンの間で水素結合が確認された。これらの鉄(III)錯体は、水溶液中でもよく似た挙動を示した。すなわち強酸性領域ではモノ型およびビス型錯体を生成し、pH3.5からpH10程度まではトリス型錯体を生成することが可視スペクトルの挙動からわかった。このことは、デスフェリオキサミンやフェリクロムなどの天然のシデロフォアとよく似た挙動であり、水溶液中において末端置置換基の立体的な影響が全くないことを示している。さらに、構造解析から明らかになった水素結合が錯体の安定化に寄与しているものと考え、水素結合が生成しにくく側鎖にさらにメチル基を1つ導入した三脚型配位子を合成し、その鉄(III)錯体について水溶液中の挙動を検討したところ、トリス型錯体を生成することなく加水分解を受けることがわかった。このように本研究で用いた配位子は、水素結合を行うことで錯体をより安定化していることがわかった。
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