1996 Fiscal Year Annual Research Report
炭素-炭素二重結合還元酵素の探索とその不斉合成化学への応用
Project/Area Number |
08740562
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河合 靖 京都大学, 化学研究所, 助手 (20240830)
|
Keywords | 不斉還元 / パン酵母 / 炭素-炭素二重結合還元酵素 / 不斉合成 / 光学活性カルボニル化合物 / 光学活性ニトロ化合物 |
Research Abstract |
α,β-不飽和ケトンやニトロオレフィンなどの活性な炭素-炭素二重結合を立体選択的に還元する酵素を微生物中から見つけだし,その酵素を用いた新しい不斉合成反応を確立することが申請者の計画である. 微生物としては最も汎用的なパン酵母を選び,まず初めにα,β-不飽和ケトンである3-メチル-4-(3-クロロフェニル)-3-ブテン-2-オンを基質として酵素の探索を行ったところ,炭素-炭素二重結合だけを還元する酵素を一種類見出した.この酵素を用いてフェニル基上の置換基を系統的に変化させ,還元の立体選択性に及ぼす影響を検討したところ,無置換あるいはパラ置換体では立体選択性は低いが,オルトあるいはメタ置換体では飛躍的に選択性が向上し,不斉収率95%以上で光学活性なケトンが得られた.この場合,置換基の種類は立体選択性に無関係であり,常に高い不斉収率で生成物が得られる.また,微生物を用いて同様の反応を行うとカルボニル基の還元等の副反応が同時に起きてしまい,目的物の収率が低下してしまうが,精製した酵素を用いることで望む反応だけを行うことができる.この様にして本酵素による炭素-炭素二重結合の還元反応では置換基の位置が立体選択性を支配する最も重要な因子であることを明らかにし,カルボニル基の還元といった副反応のない,高立体選択的な光学活性カルボニル化合物の合成法を確立した. 次に,ニトロオレフィンである1-シクロへキシル-2-ニトロー1-1プロペンを基質として酵素の探索を行ったところ,パン酵母中には炭素-炭素二重結合だけを還元する酵素が四種類以上存在していることを見出した.また,その内の一つは上述のα,β-不飽和ケトン還元酵素と同一であり,1-シクロへキシル-2-ニトロー1-プロペンを立体選択的に還元し光学活性なニトロ化合物を与える. 本酵素を用いることでα,β-不飽和ケトンおよびニトロオレフィンの炭素-炭素二重結合を立体選択的に還元し光学活性なカルボニル化合物およびニトロ化合物の合成法を確立した.
|