1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08740579
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松岡 史郎 九州大学, 理学部, 助手 (10219404)
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Keywords | 固相分光法 / 少量の試料 / 顕微分光法 / 微量成分 / 高感度分析 |
Research Abstract |
本研究では、固相分光法において少量の試料溶液からでも高感度が得られるように、微少量の固相、例えばイオン交換樹脂のような球状の固相1粒に着色成分を吸着濃縮した後、これに細い光束を入射し、透過光強度を顕微分光法により測定する新しい微量成分分析法の開発を行った。 初めに対照相、次に試料相の透過光強度を独立に波長走査して測定した後、双方の透過光強度の商から試料相の吸収スペクトルを得た。吸収、散乱による固相の減光バックグラウンドは、粒度の均一化、光学系のジオメトリーの適正化でほぼキャンセルアウトされた。試料成分の吸収のない波長と目的成分のピーク波長との吸光度差を濃度に対してプロットすることで検量線を作成し定量を行った。 Fe(II)-フェナントロリン錯生成系、Cr(VI)-ジフェニルカルバジド錯生成系に対し以下の点を検討した。 1感度:通常の溶液法と本法の感度を比較するため、同じ吸光度値を与えるような両相の目的成分の濃度比(感度比)を計算した。目的成分の固相に対する分配比が大きい場合、感度比は固相と溶液相の体積比にほぼ比例して増加した。例えば直径約0.8mmの球状の固相に着色成分を含む試料溶液1cm^3を濃縮したとき、双方の錯生成系において溶液法の約300倍という理論値と良く一致した感度が得られた。 2再現性:Fe(II)-フェナントロリン系においては、1.5×10^<-7>mol dm^<-3>、Cr(VI)-ジフェニルカルバジド系においては2ppbの溶液の繰返し測定(n=5)を行ったところ、相対標準偏差はそれぞれ【plus-minus】2%、【plus-minus】3%であった。 3検出限界:ブランクの繰り返し測定(n=5)の結果、算出した検出限界はそれぞれ0.6ppbと0.2ppb(3σ)であった。 以上のように本法は、処理可能な量に限りのある雨水などの環境試料や生体試料中の微量成分の定量に対して非常に有効であると思われる。
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