1996 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ成虫原基におけるパターン形成機構の研究
Project/Area Number |
08740583
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
常泉 和秀 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助手 (40280953)
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Keywords | Drosophila / decapentaplesic / Mother against dpp |
Research Abstract |
本研究はキイロショウジョウバエの翅をモデル系として形態形成機構の解明を目的としている。これまでの研究により、TGF-β familyに属するシグナル分子decapentaplegic(dpp)の濃度勾配が位置情報を決定していると考えられている。その決定機構の解明のためにdppの発現パターンを指標として、dppにより誘導される新規遺伝子(1883)を単離した。1883はdppのシグナル伝達因子であるMother against dpp(Mad)の活性部位であるC末と弱い相同性を持っていた。 dppのシグナル伝達に関与する遺伝子と1883との関係を調べるために、異所性発現の系を用い成虫原基で解析を行った結果、dppや構成的に活性化されたdppの受容体であるthickvein(tkv)そしてMadにより1883の発現が誘導されることが確認された。ところが1883の異所性発現によりdppシグナルにより誘導されるspaltやoptomotor-blind(omb)遺伝子の発現抑制および1883自身の発現抑制が観察された。成虫翅での表現形はMadを異所性発現させた場合翅が肥大するのに対し1883の場合は翅が部分的に欠失する。Madと1883を同時に発現させると正常な翅に戻り互いの表現形が無くなった。1883を異所的に発現する細胞にマーカーを同時に発現させ成虫原基においてombの発現を解析した結果、1883による抑制作用は細胞自律的であることが観察された。以上のことから1883はdppにより発現が誘導されるが、その作用はdppシグナル伝達機構に細胞自律的に抑制的に作用していると考えられる。1883による負のフィードバック制御の存在から、形態形成のメカニズムに負の制御システムが重要な役割を担っていると考えられる。
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