1996 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアの遺伝暗号とゲノム変異圧による中生動物の系統的位置の解析
Project/Area Number |
08740666
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
別所 義隆 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助手 (70242815)
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Keywords | 中生動物 / 二胚虫 / ミトコンドリアDNA / ミニサークルDNA / COI遺伝子 / 始原多細胞動物 / 遺伝暗号 / ゲノム変異圧 |
Research Abstract |
中生動物を代表する二胚虫類は、その体制の単純さから原生動物と後生動物の中間に位置付けられているが、一方で、扁形動物、とくに吸虫類が退化した生物だとする仮説もある。本研究ではミトコンドリアの遺伝暗号とゲノム変異圧のパターンから二胚虫類の系統位置の推定を試みた。前年度までにミサキニハイチュウのミトコンドリアCO1遺伝子は、単独で1.7kbのミニサークルDNA上にコードしていることが分かっていたが、本年度の研究により、さらにCO2、CO3遺伝子も、それぞれ単独で1.6kb,1.8kbのミニサークルDNA上にコードしていることが明らかになった。さらに、近縁のアオリイカニハイチュウを調べ、CO1,CO2遺伝子が、それぞれ1.6kb,0.8kbのミニサークルDNA上にあることが分かった。通常、後生動物のミトコンドリアDNAは14〜16kbの大きな環状DNAに複数の遺伝子が並んでコードされている。二胚虫のように遺伝子が1つ1つ分断されている例は報告されておらず新発見となった。また、得られた配列と他生物のアミノ酸配列を比較する事で、二胚虫のミトコンドリアの全遺伝暗号が明らかになった。ミトコンドリアの変則暗号は系統樹のどこで生じたかが分かっているので、門レベルの系統位置を決める良い指標になる。原生動物から後生動物が出現する際に、AUA及びGRコドンで暗号変化が起っている。また、扁形動物の枝で独自にUAA,AAAコドンが変化している。さらに扁形動物のプラナリアを調べ(発表論文)これを確かめた。本研究で調べた二胚虫の遺伝暗号は扁形動物のものではなかった。また、後生動物出現の際に生じた暗号変化のためのゲノム変異圧を保持していることが分かった。これらより、二胚虫類は扁形動物の退化生物でなく、より原生動物に近い原始的な多細胞動物であると考えられる。
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