1996 Fiscal Year Annual Research Report
水素終端されたシリコン面の初期酸化過程の角度分解紫外線光電子分光法による解明
Project/Area Number |
08750038
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Research Institution | Musashi Institute of Technology |
Principal Investigator |
野平 博司 武蔵工業大学, 工学部, 講師 (30241110)
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Keywords | X線光電子分光法 / シリコン酸化膜 / 価電子帯端の連続量 / SiOX_2-Si / 水素終端Si(111) / 価電子帯構造 |
Research Abstract |
初期酸化過程の解明の予備検討から、水素終端面を酸化することによって形成した膜厚1.8mm以下の極薄酸化膜の価電子帯構造について、新しい知見の手がかりを見出した。そこで、まず価電子帯形成の初期過程を詳細に検討した。さらに、Si(111)面を1Torrの乾燥酸素中600-800℃において酸化すると、酸化の進行とともに界面構造が周期的に変化することを手がかりとして、界面における価電子帯端の不連続に及ぼす界面構造の影響を調べた。実験は、試料に抵抗率10-20Ω・cmのn-type Si(111)基板を用い、40%NH_4F溶液処理により水素原子で終端されかつ原子スケールで平坦なSi(111)面を用意した。この水素終端Si面上に乾燥酸素中300℃で膜厚約0.5nmのプレオキサイドを形成し、このプレオキサイドを介して、酸化温度600-800℃で酸化膜厚が約1.6nmとなるまで酸化した。試料の評価は、高分解能X光電子分光装置(Scienta Instruments AB 製ESCA-300)を用いて、光電子の脱出角15゚と90゚で価電子帯およびSi2p光電子スペクトルを測定することにより行った。表面感度の高い光電子の脱出角15゚で測定した膜厚の異なる試料からの光電子スペクトル間で差分を行うことにより、酸化膜表面近傍の価電子帯スペクトルを抽出した。この結果と、検出深さの深い光電子の脱出角90゚における価電子帯スペクトルの測定結果との比較から、界面から0.9nm以内のシリコン酸化膜の価電子帯の上端は、バルクの酸化膜のそれと約0.2eV異なることを見出した。また、界面における価電子帯端の不連続量は、界面構造と共に周期的に変化することを見出した。これは、シリコン原子と酸素原子の電気陰性度の違いのために、Si^<3+>からなる界面の価電子帯端の不連続量が、Si^<1+>からなる界面のそれより大きくなると考えることによって説明できる。
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