1996 Fiscal Year Annual Research Report
瀬戸内にみられる伝統的な地域共有空間「辻堂」の今日的役割に関する基礎的研究
Project/Area Number |
08750738
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
酒井 要 福山大学, 工学部, 助手 (10235103)
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Keywords | 辻堂 / 茶堂 / 地域分布 / 現存状況 / 中四国地方 / 寺院構成割合 |
Research Abstract |
本報告は、中四国地方9県を対象とし、多くの共通する要素が見られれ備後の辻堂と伊予・土佐の茶堂の地域的な広がりを把握するとともに、その地域分布特性について宗派別寺院構成割合に注目し考察したものである。 調査は、四方吹き放しまたは三方吹き放しの建物を対象とし、中四国9県の534市町村の教育委員会宛で1996年7月に調査票を郵送し、1996年12月末までに534市町村の約9割に当る470市町村から回答が得られた。 その結果、辻堂または茶堂が現存している市町村が158、昔はあったが消滅した市町村が31を数え、残りの274市町村では4本柱の吹き放し建物はなく、470市町村の約4割で辻堂または茶堂の存在が確認された。 この中四国地方の各市町村における辻堂や茶堂の現存状況から、次のようなことが明らかになった。 (1)辻堂が濃密に存在しているといわれる備中と備後は、他の地方とは異なり、ぼぼ全域の市町村に現存しており、辻堂が昔みられた市町村も含めると、備中で82%、備後では88%の高い値を示している。また、備後に接する安芸や備中と接している美作では、備後側に近い市町村に辻堂が現存する傾向がみられており、備中・備後を核とした辻堂文化の広がりをうかがわせる。また、茶堂のみられる市町村の分布状況は、伊予西部の内陸部に現存する市町村が集中しており、この伊予の茶堂のみられる市町村分布が、土佐西部の山間部にも広がっている。 (2)辻堂の呼ばれ方をみると、辻堂と呼ばれる地方が最も多く、中四国全域にみられることから一般的な呼び方といえるのに対して、茶堂という呼ばれ方は、そのほとんどが伊予・土佐に集中しており、四国地方での特有な呼称と考えられる。その他に中国地方では四つ堂、四国地方では四足堂という呼び方もみられている。 (3)中四国地方において最も多い宗派は浄土真宗十派、次いで真言系、禅宗系であり、この3宗派で全体の約8割を占めている。辻堂・茶堂の現存の有無別にこの主要3宗派が過半数を占める市町村数の割合をみると、地方によって割合が異なるが、辻堂・茶堂が現存する場合の方が無い場合よりも禅宗系寺院が過半数の市町村の占める割合が高い傾向がみられることから、辻堂・茶堂と禅宗系寺院との関わりが指摘できる。
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