1996 Fiscal Year Annual Research Report
水熱電気酸化法による高原子価状態の遷移金属酸化物の合成
Project/Area Number |
08750774
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
内田 聡 東北大学, 反応化学研究所, 助手 (60232849)
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Keywords | 水熱反応 / 水熱合成 / 電気酸化 / ニッケル酸化物 / 高原子価 / アルカリ溶液 / 加水分解 / 高温水溶液 |
Research Abstract |
高温水溶液はその中での無機化合物の溶解挙動が変化に富んでおり、難溶性の鉱物でさえ溶解させる特殊な性質から"ストレス溶液"として古くから地質学者の興味の対象とされてきた。特に、アルカリ性の高温水溶液は非常に強い酸化力を持つことから未知の反応場として応用が期待される。そこで本研究では、近年の測定技術や高圧技術の発展の成果を取り込んで独自の反応装置を組み上げ、高温アルカリ水溶液中に溶解しているFe (IV)やNi (IV)を初めとする種々の遷移金属イオンを電気化学的に酸化し、他の方法では得られない高原子価状態の金属酸化物の合成を目的として実験を行い、以下の実績を得た。 (1)装置の作製と実験条件の確立 水熱反応の化学について研究を成功させるためのキ-ポイントは、実験装置の材料選定・設計および製作技術にある。本研究で新たに作製した反応装置は、ステンレス製オートクレーブに白金電極を付加することにより高温水溶液の電気化学酸化を可能とするものである。基本条件としてアルカリ濃度1〜100mol/kg,温度300℃までの範囲で各種金属粉末を水熱酸化し、金属イオンの濃厚融液の状態を作り出してから電解析出を行なった。 (2)遷移金属酸化物の合成 本研究で目標とする高次金属酸化物はいずれも特殊な反応場で合成されることから、組成や結晶構造に特異製を発現する可能性が期待される。実際、種々の金属を試した結果金属ニッケルをNaOH濃度80mol/kgのアルカリ水溶液中で水熱電気酸化した場合、これまで報告例のない六方晶系の新規酸化物(Na_<0.2>NiO_2)が生成することを見い出した。組成分析の結果、この化合物は結晶内部に3価のNi20%と4価のNi80%を含んだ高原子価状態の酸化物であることが分かった。
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