1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08750786
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
橋本 忍 名古屋工業大学, 材料工学科, 助手 (10242900)
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Keywords | カルシウム クロマイト / 針状結晶 / ウィスカ- / 成長機構 / 複合材料強化材 |
Research Abstract |
Cr_2O_3,CaCO_3およびSiO_2の混合粉末を、加熱中酸素分圧が変化する環境で加熱した場合に生成する針状結晶はCr_2O_3ではなくβ-CaCr_2O_4であることがわかった(予備実験当初は純度が低く針状結晶のみを同定できなかった)。注目されたSiO_2は必ずしも必要ではなく,Cr_2O_3とCaCO_3の混合粉末からでも得られることがわかった。 Cr_2O_3(40mol%)とCaCO_3(60MOL%)の混合粉末(2.5g)を、穴(1×10mm2つ)を側面にあけたアルミナ坩堝(口径40mm,高さ50mm)中に敷いた炭素粉末(2.0g)上にのせ、蓋を被せ電気炉中1500℃以上で4時間加熱した場合、加熱後坩堝底に残留凝縮物が得られた。この凝縮物を塩酸(35%)中で数時間処理することにより針状β-CaCr_2O_4結晶が分離された。1700℃で4時間加熱した場合の平均径は約118μm、平均長さは約2.6mmであった。この大きさのβ-CaCr_2O_4結晶の合成報告は今までにない。収率は約41%に達した。結晶学的伸長方向はc軸であった。 β-CaCr_2O_4はCr_2O_3と同じく、スラグ等化学侵食物に対する抵抗生に優れ、高融点(約2170℃)であるため、製鋼用耐火物を主とする高温構造材料の強化材料として注目されている材料である。この結晶には多形があり、低温ではβ相、高温ではα相が安定となる。温度が同一でも酸素分圧の違いにより安定相が異なる。1500℃以上の本実験では、炭素が共存する間は板状α-CaCr_2O_4結晶が生成した。空気中その温度ではβ-CaCr_2O_4が安定である。1600℃の炭素共存中に生成したα相の板状結晶を取り出し空気中1200℃で再加熱した場合、加熱後微細な針状β-CaCr_2O_4結晶が生成した。即ち,はじめ炭素が共存する低酸素雰囲気下で生成したα-CaCr_2O_4が炭素焼失後の酸素分圧の上昇により安定なβ-CaCr_2O_4結晶に転移し、またその一部が液相に変化し、この液相中でβ-CaCr_2O_4結晶が溶解析出反応により成長したものと考えられた。 今後、完成している雰囲気制御電気炉を利用して坩堝法により詳しく調べられた実験データおよび成長機構を検証すると同時に、得られた針状結晶を強化材とする複合材料としての応用を模索検討する。
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