1996 Fiscal Year Annual Research Report
光吸収エネルギーの熱緩和過程を利用した機能複合型非線形光屈折材料の創製
Project/Area Number |
08750794
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
渡邊 裕一 東京理科大学, 基礎工学部, 講師 (70220936)
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Keywords | 非線形光学 / 共鳴効果 / 熱緩和 / 非線形屈折 / 酸化物ガラス |
Research Abstract |
1.研究目的:本研究では、位相共役光学デバイスへの応用材料として遷移金属のdd遷移を利用した機能複合型非線形光屈折材料の創製に関する基礎的知見を得ることを目的とする。 2.実験方法:着色イオンとしてCo(II)およびCu(II)イオンを含むリン酸亜鉛硝子を通常の溶融急冷法にて作製、平行平板状に加工して光学測定に供した。各試料の非線形屈折は、単光束法および二光束法により評価した。 3.実験結果と考察:Co(II)およびCu(II)イオンを含むリン酸亜鉛ガラスについて、dd遷移吸収帯に相当する波長領域で正の非線形屈折の発現を確認した。着色イオンを含まない母ガラスでは非線形屈折が観測されないこと、イオン種・波長域に寄らず非線形屈折の符号が正であることから、この非線形屈折は着色イオンのdd遷移による光吸収エネルギーが熱として媒体であるガラスに緩和し、ガラスの温度上昇に伴って屈折率が変化することに起因すると考えた。さらに、光吸収を担う波長と非線形屈折を検出する波長が異なる場合においても同様な現象が観測され、上記解釈の妥当性が支持された。 4.今後の展開:本研究で得られた知見は、光吸収と非線形屈折という二つの機能を複合させた新機能材料の創製を提案するものである。これを実用に供するためには時間応答性の評価が必要不可欠となる。すなわち、本研究での評価はナノ秒レベルの時間応答性にとどまるが、同様な現象がピコ秒領域でも確認されれば実用化への目安となる。ガラス系、着色イオン種の検討と併せて今後の重要な課題である。
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[Publications] Yuichi Watanabe: "Two-Photon Absorption in Tin Dioxide Single Crystal at 532nm" Japanese Journal of Applied Physics. vol.35. 4681-4682 (1996)
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[Publications] Masashi Nakazawa: "Measurement of Two-Photon Absorption Coefficient of Transparent Polycrystalline Zinc Oxide with c-Axis Orientation" Journal of the Ceramic Society of Japan. vol.104. 918-921 (1996)