1996 Fiscal Year Annual Research Report
糸状菌の形態制御物質を用いた生理活性物質の大量生産技術の開発
Project/Area Number |
08750920
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
富田 治 東京工業大学, 工学部, 助手 (90262310)
|
Keywords | 糸状菌 / 植物病原菌 / 宿主植物 / 形態制御 / 生理活性物質生産 / テントキシン |
Research Abstract |
糸状菌による有用物質生産では,菌糸の増殖形態を制御することが物質移動や操作性などの工学的観点から重要であり,申請者はこれまでに,糸状菌Alternaria alternata(植物病原菌)による除草活性物質tentoxinの生産系において,本菌の主要宿主植物であるCucumis sativusの葉部抽出液が菌糸の形成するペレットのサイズコントロールに効果的であることを見い出した.申請した研究課題は,宿主植物の抽出液中に存在し糸状菌(植物病原菌)の形態制御能を有する物質を単離・構造決定すること,および、この形態制御物質を用いた大量生産技術の開発を目的とし,以下の研究実績をあげた. 1.形態制御物質の単離と構造決定:C.sativus葉部抽出液は,TLCによりその分離特性を把握し適当な分離材と溶離液を決定した後,同様の性質を有する分取用HPLCカラム,溶離液および分取用HPLCシステムを用いて葉部抽出液の成分分取を行った.分離された各分画成分は形態制御能に対する活性試験により選別し,活性が認められた分画について,さらに元素分析,MS,IR,NMRなどの分析機器を用いて元素組成,分子量,分子式,官能基,基本骨格などに関する情報の収集・解析を行った.得られたデータにより,目的成分は分子量として200-1000を有し,親水性でありアミノ酸および糖の構造を含むことが示唆された.詳細な構造に関しては現在も解析中である.また糸状菌一般に対して有効な新しい形態制御物質の開発を目指した戦略的データの蓄積を図るため,他の糸状菌(植物病原菌)-宿主植物間における同様もしくは類似な形態制御能を有する物質の存在に関する文献調査および情報収集を行った. 2.形態制御物質を用いた大量生産技術の開発:糸状菌A.alternata(植物病原菌)による除草活性物質tentoxinの生産をモデルとして,形態制御物質を含むC.sativus葉部抽出液の培地添加濃度,添加のタイミングなど最適操作条件を決定するための基礎データを収集した.本研究による開発した糸状菌の形態制御能は,従来のセラミック系やポリウレタン系の担体を用いたものに劣らないことが確認され,tentoxinの生産開始に要する時間の短縮や比生産速度の上昇に効果が認められた.また半連続的操作法として20日間を1周期とした反復回分操作による60日間にわたる連続的生産を行い,流加する培地成分をコントロールすることにより,各周期とも菌体のペレットサイズを維持しながら生産性を大幅に増大させることに成功した.今後の研究の展開として,より高濃度な高密度培養法あるいは反応・分離一体型プロセスの開発などが計画されている.
|