1996 Fiscal Year Annual Research Report
連鎖球菌により生産される機能性糖鎖の免疫応答調節への反応と免疫関連治療薬の開発
Project/Area Number |
08750924
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西島 謙一 名古屋大学, 工学部, 助手 (10262891)
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Keywords | 糖鎖工学 / 抗体生産 / B細胞 / T細胞 / ルイス糖鎖 |
Research Abstract |
免疫系の糖鎖による調節はその重要性が示唆されながら、その構造の複雑さからその細かな仕組みなど重要な側面についても十分な検討がなされてこなかった。その中でシアル酸含有多糖であるシアリルルイスX、シアリルルリスaは免疫系の様々な細胞上に存在し、その活性調節への関与が示唆されている。我々は既にこれらに類似した糖鎖を連鎖球菌より大量に調製することに成功しており、本研究では連鎖球菌糖鎖やその誘導体を用いた免疫応答調節を試みた。連鎖球菌S.agalactiae Ia,Ib由来糖鎖は単独では脾臓リンパ球の増殖応答・抗体産生応答を誘導しなかった。次に活性化されたリンパ球に対する効果を検討した。まず、リポポリサッカライドにより誘導されるBリンパ球の抗体産生に対する連鎖球菌糖鎖の効果を検討した。シアリルルイス糖鎖の細胞表面リガンドであるセレクチンに対する抗体は抗体産生を強めることが明らかとなった。Bリンパ球を精製してもこの活性が認められたことから、抗セレクチン抗体はBリンパ球に直接作用しているものと考えられた。同様に、シアリルルイス糖鎖は抗体産生を強めることが認められ、Bリンパ球の抗体産生調節におけるセレクチン分子の重要性が示唆された。今後、連鎖球菌糖鎖をシアリルルイス糖鎖そのものの重合体に改変することができれば、抗体産生を強める機能性糖鎖としての利用が期待できる。次に、コンカナバリンAレクチンによるTリンパ球の増殖について検討したところ連鎖球菌糖鎖によって強く促進されることが示された。一方、化学合成されたシアリルルイス糖鎖モノマーはTリンパ球の活性化に影響を及ぼさなかった。この違いが糖鎖の重合度の差によるものであるかについてさらに検討している。これらの結果により、シアリルルイス糖鎖及びアナログ糖鎖の重合体である連鎖球菌糖鎖の免疫賦活剤としての可能性が示唆された。
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