1996 Fiscal Year Annual Research Report
新規高歪みポルフィリンの合成とその反応性に関する研究
Project/Area Number |
08751009
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
依馬 正 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助手 (20263626)
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Keywords | ポルフィリン / 歪み / 不斉 |
Research Abstract |
二つのポルフィリンを共有結合で連結する際、嵩高いスペーサーを用いることによりポルフィリン環に歪みを誘導しようと試みた。分子内架橋化ユニットとしてはキシリレンやナフタレンを試したが、目的化合物は得られないか得られても収率が低く単離精製が困難であった。そこで架橋ユニットとしては嵩高くないトリメチレン鎖を選び(架橋化反応の収率62%)、その亜鉛錯体に対して種々の異なる鎖長のジアミンH_2N(CH_2)_nNH_2を取り込ませることにより歪みが誘導されるか検討することにした。鎖長はn=2〜7のものを試し、紫外可視吸収スペクトルによる滴定実験を行った。全ての場合において、1等量のジアミンを添加した時点で吸収変化は無くなり定量的に1:1の会合錯体が形成されることが分かった。どの場合も会合定数は>10^7と大きな値を示すことが明らかになった。このような強い結合は二つの配位結合が同時に働くことによるものと思われる。さらに円二色性(CD)スペクトルを測定したところ、ジアミンの鎖長に応じて不斉励起子相互作用に基づく分裂型のコットン効果の大きさが劇的に変化した。これは、非常に強い二重配位結合により二つのポルフィリン間の距離と配向が柔軟に変化したものと考えられる。現在、このコンフォメーション変化(inducedfit)がポルフィリン環の歪みを誘起しているか調査中である。 合成した不斉ポルフィリン二量体の配座解析は、NMR,CDスペクトル及び分子力場計算によって行った。その結果、二つのポルフィリンは互いにほぼ並行でずれた配置(slipped cofacial orientation)をとっていることが示唆された。これは生体中で見られるクロロフィルの配列様式と似ており、そのような配置とエネルギー及び電子移動効率との関係を研究する上で興味深い系が構築されたといえる。
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