1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08751041
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
新田 晃平 北陸先端科学技術大学院大学, 新素材センター, 助教授 (70260560)
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Keywords | 結晶性高分子材料 / 球晶構造 / 力学物性 / 応力-ひずみ曲線 / 構成方程式 / ポリプロピレン / ポリエチレン |
Research Abstract |
本研究の目的は,球晶構造を形成する結晶性高分子固体の力学的性質に分子論的な解釈を与えることにある。その目的の遂行の為に,応力が集中する非晶相の鎖の状態を記述したより現実に近い球晶構造モデルを構築し,球晶の変形による応力-ひずみ曲線を理論的に検討した。そこでは,非晶鎖として,結晶間を繋ぐタイ分子,結晶間に存在する浮遊鎖,末端が結晶相に付着したシリア鎖,そして1つの結晶版に両端が繋がったループ鎖を考慮した。それらの非晶鎖が結晶の剛体版の間に挟まれた環境下で,延伸に伴う自由エネルギーの変化を球座標系で積分計算し,球晶の応力-ひずみ曲線を計算する基礎となる構成方程式を導出することに成功した(投稿準備中)。さらに,実験による本理論の検証を目的として代表的な結晶性高分子の1つであるポリプロピレンを用いて,球晶構造を形成させて試料フィルムを作製し,試料の球晶状態のキャラクタリゼーションを行った(発表予定)。また,本科研費で購入した両チャックが同時に動くように改良した小型引張試験機(特注)を,現有の小角光散乱装置に試料の変形部分のみに偏光レーザーがあたるように装着し,変形過程中で応力と球晶の変形を同時に検出できるシステムを構築をさせ,コンピューター上で球晶の応力-ひずみ曲線を解析できるようにした(投稿準備中)。ポリプロピレン系の材料を用いて予備検討した結果,理論と実験による応力-ひずみ曲線は,定性的によく一致することが確認された。これまで,分子論的には不明であった降伏挙動が本理論より非晶相の変形機構によって説明できる可能性が見出された。今後,球晶を構成する結晶ラメラの構成が異なるポリエチレン系の材料を用いて検証を進めていく予定である。
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Research Products
(1 results)