1996 Fiscal Year Annual Research Report
ブロック共重合体のミクロ相分離構造の秩序化過程での「トンネル効果」の実験的検証
Project/Area Number |
08751048
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
櫻井 伸一 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助手 (90215682)
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Keywords | ブロック共重合体 / ポリマーアロイ / ミクロ相分離構造 / ラメラ構造 / 秩序化過程 / 小角X線散乱 / 電子顕微鏡 / モルホロジー |
Research Abstract |
スチレン-ブタジエン-スチレントリブロックポリマーのミクロ相分離構造の形態(モルホロジー)について、乱れたラメラ構造が熱処理によってしだいに秩序化し、最終的にはかなり高度に秩序化されるメカニズムの解明を目標に、研究を行なった。この目的のため、小角X線散乱実験、透過型電子顕微鏡観察によってモルホロジーの解析を行なった。また、粘弾性測定を行ない、流動外場下でのラメラ構造の秩序化に要する活性化エネルギーを算出した。その結果、ラメラ構造の秩序化に関する「トンネル効果」的なメカニズム、すなわち、ラメラの部分的融解と再結合による秩序化メカニズムを実験的に検証することができた。 用いた試料の数平均分子量は6.3万、組成はスチレンの重量分率が0.56である。試料をメチルエチルケトン(MEK)に溶解させ、室温でMEKを徐々に蒸発させて測定試料フィルムを製膜した。この時、試料内部にはポリブタジエンシリンダー構造が形成されていることが確認された。本来、この試料では組成から判断すると、ラメラ構造が安定に存在すると考えられ、実際130°C以上での熱処理ではシリンダー構造からラメラ構造へと転移した。その過渡期に極端に波打ったラメラ構造が現われた。小角X線散乱実験、粘弾性測定によって求まる活性化エネルギーを比較検討した結果、本研究の対象である何の外部場もない場合のラメラ構造の秩序化に要するする活性化エネルギーが流動外場下でのラメラ構造の秩序化に匹敵するぐらい小さいことが証明できた。すなわち、流動外場下でのラメラ構造の秩序化は、ラメラの部分的破壊と再結合により起こっていることが定説になっているので、上記の証明は、何の外部場もない場合のラメラ構造の秩序化が類似の「トンネル効果」的メカニズム、すなわち、ラメラの部分的融解と再結合により起こっていることを間接的に示すものである。
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Research Products
(1 results)