1996 Fiscal Year Annual Research Report
キンギョソウ・トランスポゾンTam3に対する転移抑制遺伝子の機能解析
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08760002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
貴島 祐治 北海道大学, 農学部, 講師 (60192556)
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Keywords | キンギョソウ / トランスポゾン / Tam3 / 転移 / スタビライザー遺伝子 / 転移抑制 |
Research Abstract |
本研究では、キンギョソウのトランスポゾンTam3の転移を抑制すると考えられているStabilizer遺伝子の機能について調査した。まず、キンギョソウの斑入花系統(HAM5)よりゲノミックライブラリーを作成し、その中からTam3をプローブに99個のクローンを選抜した。得られたクローンはTam3との相同性を確認後、Tam3トランスポゾンの内部およびその周辺域の構造解析に供試された。各クローンのTam3コピーの比較の結果、Tam3ファミリーには構造的特徴として変異の著しい領域と保存性の高い領域のあることが明らかとなった。変異の著しい領域はTam3の両端に位置し、そこはトランスポゼ-ス結合部位として知られているサブターミナルリピートが含まれる。また、変異領域の範囲はループ形成部位と一致することから、構造変異がループ形成と関連する可能性の高いことが示唆できた。保存性の高い領域はトランスポゼ-スをコードする部位を中心に約2.5kbpの範囲にわたっていた。これらのコピーの中で可動性あるいは非可動性が明確になったものはそれぞれ、7および6コピーで全体の約半数のコピーは染色体に固定され転移活性を失っているもの考えられる。 次に、Stabilizer遺伝子の効果を前述のHAM5系統と遺伝的背景を同じくし、Stabilizer遺伝子を付加したHAM3系統を使って調査した。Stabilizerを有するHAM3系統の花弁では斑の形成が少ないことからこの遺伝子はトランスポゾンの転移を抑える効果をもつとされる。本研究では、先にHAM5より単離したTam3コピーを同様に有するHAM3系統において、各コピーの転移挙動をHAM5と比較した。その結果Stabilizerの効果が認められるコピー(HAM5に対しHAM3ではTam3の転移が検出されない)と効果が認められないコピー(Tam3の転移が検出される)の両方が存在した。従って、Stabilizer遺伝子は選択的にTam3コピーの転移挙動を制御していることが示唆できた。今後、Stabilizerの転移制御とその選択性について詳細な調査を行う必要がある。
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[Publications] Aii.J: "Expansion of the IR in the chloroplast genomes of buckwheat species is due to incorporation of an SSC sequence that could be medited by an inversion" Current Genetics. (1997)
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[Publications] 貴島 祐治: "トランスポゾンによるキンギョソウの分子遺伝子" 植物細胞工学シリーズ. 5. 122-131 (1996)