1996 Fiscal Year Annual Research Report
イネ属植物における葉緑体からミトコンドリアへのDNAの進化的移行
Project/Area Number |
08760004
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
塩月 明 (菅野 明) 東北大学, 遺伝生態研究センター (10260449)
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Keywords | ミトコンドリアゲノム / 葉緑体DNA様配列 / 遺伝子発現 / イネ科植物 / イネ属植物 / 葉緑体ゲノム / 移行 |
Research Abstract |
イネミトコンドリアゲノム中には16ヵ所の葉緑体DNA様配列が同定されている。この葉緑体ゲノムからミトコンドリアゲノムへ移行した領域をイネ科植物で比較すると、全体的には非常に変異に富んでいたが、この内の1ヵ所がイネ科植物で非常に良く保存されており、この領域がミトコンドリア内で発現に関与していると考えて解析したところ、葉緑体ゲノムから転移した葉緑体様trnH (ヒスチジン tRNA)遺伝子が転写され、さらにtRNAの大きさにプロセッシングされていた(Intl. Rice Res. Notes. in press)。 今年度はまずこの領域に関してイネ属植物でも保存されているか否かをPCR法を用いて解析したところ、AA・BB・BBCC・CC・CCDD・EEゲノムのイネ属植物すべてで保存されていることが明らかになった。このことから上記の葉緑体様trnH遺伝子はミトコンドリアゲノム特異的な領域のプロモーターから転写されていることが予想されたので、その転写開始領域を解析した結果、予想通りミトコンドリアゲノム特異的な領域のプロモーターから転写されていることが明らかになった(Plant Mol. Biol. in press)。 さらに他の葉緑体DNA様配列4ヵ所についてイネ属植物でどれくらい保存されているかを確かめるために、PCR法を用いて解析したところ、葉緑体様trnH遺伝子のように遺伝子発現に関与している領域に関してはイネ属植物だけでなくいくつかのイネ科植物においても保存されていることが明らかになった。しかしながら、遺伝子発現に関与していないと考えられる領域に関してはイネ属植物の中でも保存されているものとされていないものがあることが明らかになり、保存されていない領域は、おそらくミトコンドリアゲノム中で働きを持たなかったために、進化の過程で欠失や組み換えにより消失したものと考えられる。
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