1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08760073
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
武田 穣 横浜国立大学, 工学部, 助手 (40247507)
|
Keywords | Sphaerotilus natans / sheath / composition |
Research Abstract |
有鞘細菌(Sphaerotilus natans)より純度の高い鞘を調製するためには、同菌を希薄なペプトン培地を用いて高通気下で培養する必要があった。すなわち、糖を添加したり通気量が十分でない場合には、菌体内にポリヒドロキシ酪酸の顆粒が蓄積し、これが蛋白質と共に調製後の鞘に残存することが判明した。調製した鞘票品に対してメタノリシスを施した後、ガスクロマトグラフで脂質の含有量を測定したところ、2%以下であることは判明した。呈色反応によって、糖質、蛋白質の含有量は、それぞれおよそ30〜40%であることがわかった。したがって、鞘はほとんど糖と蛋白質より構成されているものと予想された。糖成分としては、グルコースとガラクトサミンが1:4のモル比で含まれていた。アミノ酸としては、グリシン、システイン、リジン、アラニン、グルタミン(酸)がおよそ10:5:1:1:1で存在し、その他のアミノ酸は検出できない程度か極少量だった。鞘中でシステイン残基は全てジスルフィド結合を形成していることが、SH基指示薬との接触実験によって示唆された。しかし、ジチオスレイトールや2-メルカプトエタノールなどの還元剤を加えて加熱しても、鞘は構造を維持していたことより、ジスルフィド結合は鞘構造の直接関与してはいないと予想された。鞘をヒドラジンに浸し無水条件下で加熱すると、鞘は容易に溶解した。ヒドラジンはアミノ基の関与する結合を選択的に切断することより、ペプチド結合が鞘の構築に関与していることが示された。また、ヒドラジン分解によって、平均分子量約8万(プルラン換算)の多糖が遊離した。以上の結果より、鞘は多糖がペプチドによて架橋されることによって、その形状を維持しているものと結論するに至った。
|