1996 Fiscal Year Annual Research Report
T細胞抗原レセプタートランスジェニックマウスを用いた経口免疫寛容誘導機構の解析
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08760126
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
八村 敏志 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (40238019)
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Keywords | 免疫学 / 食品アレルギー / T細胞 / トランスジェニックマウス / 経口免疫寛容 |
Research Abstract |
タンパク質抗原を経口的に投与するとその抗原に対する免疫不応答となる現象が知られており、経口免疫寛容と呼ばれている。この経口免疫寛容は、食物抗原に対する過剰な免疫応答を起こさないための生体の調節機構と考えられ、その誘導メカニズムの解明が食品アレルギーの発症機構の解明、またその予防・治療法に重要であると考えられる。本研究では、T細胞抗原レセプタートランスジェニックマウス(TCR-Tg)を用い、経口免疫寛容誘導機構を解析した。 卵白アルブミン(OVA)特異的TCR-TgにOVAを飼料中の成分として投与すると、T細胞の抗原特異的インターロイキン-2(IL-2)産生能が大きく低下し、IL-4産生能は増強され、Th2型サイトカイン産生パターンのT細胞が誘導された。Th2細胞はB細胞の抗体産生を介助することが知られるが、経口免疫寛容状態においては抗体産生はむしろ低下する。そこで、OVAを経口投与したTCR-Tgマウスの脾臓T細胞(OVA-fed-T)、およびin vitroで分化誘導したTh2細胞(以下単にTh2)の抗体産生ヘルパー機能をin vitro抗体産生系を用いて比較した。Th2は抗体産生を強く誘導したのに対し、OVA-fed-Tのはほとんど抗体産生を誘導しなかった。次に、OVA-fed-T細胞、OVAを経口投与していないコントロールTCR-TgのT細胞(以下Con-T)を2次刺激後の抗体産生ヘルパー機能を検討した。その結果、Con-Tと比較してOVA-fed-Tの抗体産生誘導機能は大きく低下していた。これらの結果より、抗原の経口投与によりTh2様サイトカイン産生を持つT細胞が誘導されるが、この細胞は典型的Th2細胞とは異なりヘルパー機能を欠き、さらに抗体産生レベルでの経口トレランスの誘導に関与することが示唆された。
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Research Products
(1 results)