1996 Fiscal Year Annual Research Report
S-Ovalbuminの生成機構に関する蛋白質工学的研究
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08760135
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 延行 京都大学, 食料科学研究所, 助手 (20252520)
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Keywords | オボアルブミン / 熱安定性 / セリンプロテイナーゼインヒビター(serpin) |
Research Abstract |
卵白の貯蔵中に、その食品機能特性が低下する原因は、主成分であるovalbumin(OVA)が熱安定性の高い分子種、S-OVAに変化することによるとされている。本研究では、その分子機構を明らかにし、タンパク質一般の熱安定化原理の究明に資することを目的として、組み換え型OVAや、各種修飾OVAを用いてS-OVAの生成機構にアプローチした。 1,ジスルフィド結合還元型OVAを用いた解析 OVAの分子内S-S結合を還元切断し、ブロックした還元カルボキシメチル化OVA(RCM-OVA)を調製し、S-OVAのような熱安定化が超こるかどうかを検討した。示差走査熱量分析で、RCM-OVAが、70.9℃付近に熱変性に伴う吸熱ピークを示すのに対し、これをpH9.9、55℃、24時間インキュベートしたアルカリ処理サンプルは吸熱ピークを示さなかった。CD分析によると、この分子は、天然型や、RCM-OVAとは異なり、高次構造の崩壊が見られた。これらの結果からS-OVAの形成過程には分子内S-S結合の存在が必要であることが示唆された。 2,プロテアーゼ限定加水分解OVAによる解析 subtilisinや、elastaseを用いて、一次構造上連続した一部を欠落した分子を調製し、アルカリ処理による熱安定化が起こるかどうかを調べたところ、アルカリ処理の時間経過に伴う熱安定化の程度は、未処理のOVAと大差無く、Ala347-Ala352付近の欠落は、S-OVAの形成に影響しないことが解った。このことは、S-OVAの形成にその付近の高次構造変化を伴わないことを示唆するものである。 3,組み換え型OVAのアルカリ処理による熱安定化 セリン残基のリン酸化や、糖鎖の付加の影響の無いコントロールとして、大腸菌発現系により生産した組み換え型OVAの熱変性温度は、アルカリ処理前が72.1℃、処理後では81.2℃と顕著な熱安定化が超こり、リン酸化や、糖鎖付加がS-OVAの形成に無関係であることが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)