1996 Fiscal Year Annual Research Report
あて材細胞壁形成中における細胞骨格の動的変化に対する三次元解析
Project/Area Number |
08760157
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
船田 良 北海道大学, 農学部, 助教授 (20192734)
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Keywords | 表層微小管 / セルロース・ミクロフィブリル / あて材細胞壁 / 共焦点レーザ顕微鏡 |
Research Abstract |
圧縮あて材仮道管壁の特徴として、二次壁内層(S3)を欠くこと、二次壁中層(S2)のセルロース・ミクロフィブリルの傾きが正常材に比べ著しく大きいこと、が挙げられる。そこで、樹木に人為的な傾斜処理を行うことにより特異な細胞壁構造をもつ圧縮あて材を形成させ、表層微小管の動的な配向変化を追跡した。表層微小管の観察は、間接蛍光抗体染色法と共焦点レーザ顕微鏡観察法を組み合わせて行った。 人為的に傾斜させたイチイとトドマツの樹幹傾斜下部に、仮道管の形状が丸みを帯び、細胞間隙の多い、圧縮あて材が形成された。仮道管壁形成中の表層微小管は、分化が進むにつれて、ランダムな配向から整然とした配向に変化した。二次壁形成初期段階においては、緩傾斜の表層微小管が認められたが、二次壁形成が進むにつれて、細胞内こう側からみて時計回り方向に角度を変化させた。正常材の仮道管壁においては、細胞長軸に対して〜10度(急傾斜)まで配向が変化するのに対し、あて材仮道管では約45度まで変化し、それ以上急傾斜の表層微小管は認められなかった。この傾斜は、これまでに多く報告されている、あて材仮道管S2層のセルロース・ミクロフィブリルの角度と一致する。イチイにおいては、より分化の進んだ仮道管においてらせん状の束の表層微小管が観察された。イチイは、二次壁の最内表面にらせん肥厚(セルロース・ミクロフィブリルのらせん状の隆起)を形成するが、そのらせん肥厚と表層微小管の束の配向や位置は一致した。 本研究の結果は、樹木の木部細胞壁形成過程において、表層微小管が堆積中のセルロース・ミクロフィブリルの配向や堆積場所を制御していることを示唆している。
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